【有本香の以読制毒】アフガンの光景はまさに“明日はわが身” 自軍が戦う意思のない戦争で、米国兵士を戦死させられない - イザ!

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有本香の以読制毒

アフガンの光景はまさに“明日はわが身” 自軍が戦う意思のない戦争で、米国兵士を戦死させられない

アフガニスタンの首都カブール市内を、自動小銃を持ってパトロールするタリバンの戦闘員(AP)
アフガニスタンの首都カブール市内を、自動小銃を持ってパトロールするタリバンの戦闘員(AP)

 日本時間の15日夜、「首都カブール陥落」の速報と同時に、現地アフガニスタンの映像がネット上に流れてきた。イスラム原理主義勢力「タリバン」の支配から我先にと逃げ出す市民たち…。なかでも、離陸する航空機に多くの人が取りすがる光景は衝撃的だった。

 「国を失う」とはどういうことか。「自国を守る力を持たない国」はどうなるか。そして、頼みの綱の米軍がいなくなるとどうなるのか。まさに明日はわが身の映像といっていい。

 カブール陥落の翌日、ツイッターに流れてきて目を疑ったのが、中国メディアの次のような発信だ(原文は英語)。

 「アフガニスタンで起きたことから、台湾の人々は、ひとたび(台湾)海峡で戦争が勃発すれば、島の防衛など数時間で崩壊し、米軍は助けに来ないということを理解すべきだ。民進党(=蔡英文総統の与党)は、たちどころに降伏するだろう」(8月16日 環球時報)

 環球時報(Global Times)は、中国共産党の機関紙『人民日報』傘下のメディアで、国際ニュースを中心に扱っているタブロイド紙。昔から、「オラオラ、中国様は怖いんだぞ」というタカ派論調が持ち味だが、それにしても、「戦狼プロパガンダ」もこうまで露骨だとかえって逆効果であろう。

 しかし、その環球時報の言っていることが、まったく的外れというわけではない。いかに強固な同盟関係にあろうが、他国の軍は所詮、他国の都合で動くもの。常に私たちを助けてくれる存在ではない。この真理は、台湾人よりも、むしろ日本人こそが肝に銘じるべきである。

 一方、アフガン撤退で下手を打った米国のジョー・バイデン大統領は演説で、「われわれが予想していたよりも状況が急速に展開した」と、意外なほど率直に失態を認め、次のようにも述べた。

 「アフガニスタン軍自身が戦う意思のない戦争で、米国の兵士を戦わせ、戦死させることはできない」

 まさに、「アフガン軍」を「日本」に入れ替えて聞くべき言葉である。

 バイデン氏が認めたアフガン情勢の見立て違いは、米国当局に限ったことではないだろう。日本の「専門家」らからは、タリバンがカブールを制圧するには米軍撤退から数カ月かかるとの見立てが聞かれたが、日本外務省も同様の構えだったとも聞く。

 バイデン政権の失態を捉えて、中国とロシアはここぞとばかりに米国凋落を喧伝している。一方、米国内では無条件での米軍撤退を実行したバイデン政権への非難に加え、姿を表した現在のタリバンのリーダーが、実は2014年、オバマ政権下でグアンタナモ収容所から釈放したテロリストだったとの報道もされたため、民主党への非難が最高潮に高まっている。

 世界が大きく動こうとしているなかで、日本の課題は山積だが、ここへ来て日本政府はまたもや緊急事態宣言の延長、範囲拡大を決めた。他方、入国人数は増やすという相変わらずの支離滅裂さに、国民は疲弊する一方だ。

 いまは新型コロナウイルスだけに足をとられているときではない。だからこそ、速やかにインパクトのある策を講じてコロナ禍を早く収拾すべきだ。

 ようやくコロナの現場で汗をかく決断をしたのか、日本医師会の中川俊男会長は18日、「大規模イベント会場、体育館、ドーム形の運動施設などを、改正特措法に基づく臨時の医療施設として集中的に医療を提供する場所を確保する」という提案が出された。

 ここで政府は、承認済み治療薬の投与を、コロナ受け入れ機関以外の全医療機関、訪問医でもできるよう、かじを切るべきだ。

 アフガンのごとく、近くにいるモンスターに、あっと言う間に国を盗られてしまわぬよう、一日も早く国内の活動を正常化しなければならない。そのために、医療のオールジャパン体制を一刻も早く、と願う。

 ■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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