〝美術館〟で食す季節の恵み 東京・青山のフレンチ「メゾン・ド・ミュゼ」

産経ニュース
戦前に建てられた都心に残る希少な洋館が〝美食の館〟に(酒巻俊介撮影)
戦前に建てられた都心に残る希少な洋館が〝美食の館〟に(酒巻俊介撮影)

東京・青山の閑静な住宅街に先月オープンした、一軒家レストランが話題になっている。戦前に建てられたアールデコ様式の洋館で供せられるのは、季節の恵みをふんだんに使ったフランス料理。それは食材への感謝の気持ちに満ちあふれている。(榊聡美)

堅牢(けんろう)なアーチ状の車寄せから玄関を入り、らせん階段のあるエントランスホールへ。シャンデリアの優雅な光に迎えられ、タイムスリップしたかのような気分になる。

「もともとは、たばこ商で財を成した資産家の千葉直五郎氏が、長男の結婚を祝って昭和9(1934)年に建てた屋敷です。渋谷区の有形文化財に登録されています」

「メゾン・ド・ミュゼ」の支配人、金崎悟一さん(53)がこう教えてくれた。ミュゼはフランス語で「美術館」。館内には、「アールデコの父」と呼ばれる芸術家、エルテのコレクションがいたるところに飾られている。

「『美術館のようなレストランで食す』という意味合いが店名に込められているんです」と、総料理長の塚田茂樹さん(60)。これまで「ザ・ウィンザーホテル洞爺」(北海道)の総料理長などを務め、40年のキャリアを持つ名シェフが手掛けるのは「季節を感じてもらえるフランス料理」。そのために旬の味を求めて、全国の産地へ足を運ぶ。「山海のあらゆる食材がそろって魅力的」とほれ込んだのが、鳥取県だとか。

火を入れて新鮮

天然の岩ガキ「夏輝(なつき)」は産卵前のこの時季、身が大きくなり、「味が濃くてうまみが強い、まさに海のミルク」と絶賛する。冷製に仕立てた「岩牡蠣・夏輝の軽いポシェ」は、2度驚かされる。まず見た目の大きさに、次に口にあふれんばかりの豊潤なうまみに。

ポシェは「ゆでる」という意味がある。「加熱しても縮まず、軽く火を入れたほうが生以上の新鮮なおいしさが引き立つ。それがこのカキの醍醐味です」

ソースをまとわせたり、薫製にしたり。夏の海を思わせる華やかな磯の香と、力強いうまみが楽しめる。

メイン料理用には、ブランド牛の「鳥取和牛オレイン55」を選んだ。脂肪中に不飽和脂肪酸の一つ、オレイン酸を55%以上も含む、希少な和牛だ。融点が低いオレイン酸を多く含む牛肉は、口溶けが良くてやわらかい。低温でローストし、1時間以上かけて肉汁をしっかりと閉じ込めていく。

持ち味のよさを引き出すためには労を惜しまない。「一番新鮮な状態に感じてもらえるようにするのが料理人の務め。素材に対する感謝の気持ちです」

食材が持つ無限の可能性を信じて料理に向き合い、〝小さな美術館〟で独自のフレンチを極めていく。

■メゾン・ド・ミュゼ 東京都渋谷区渋谷4の2の9、03・3499・1999。ランチは午前11時半~午後3時、ディナーは午後5~8時(緊急事態宣言期間中)。ランチコース・7700円、ディナーコース・1万6500円(サービス料別)。

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