サイパン悲劇、記憶つなぐ 現地邦人、慰霊碑を新設

産経ニュース
スーサイドクリフに新たに建てられた戦没者慰霊碑=6月、北マリアナ諸島サイパン島(中島健一さん提供)
スーサイドクリフに新たに建てられた戦没者慰霊碑=6月、北マリアナ諸島サイパン島(中島健一さん提供)

先の大戦で日米の激戦地となり、日本の将兵と民間人計約5万5千人が犠牲になった米自治領サイパン島に今夏、現地在住の日本人らの手で戦没者慰霊碑が新たに建立された。戦後76年がたち、戦争体験者の減少と遺族の高齢化が進み、戦地に散在する慰霊碑の維持管理は年々困難になっている。記憶の継承が課題となる中、南国の慰霊碑は日本から遠く離れた地で戦火に倒れた人々がいたことを伝えている。(竹之内秀介)

慰霊碑が建立されたのは、米軍に追い詰められた日本兵や民間人が次々に身を投げた島北部の崖「スーサイドクリフ」。台座の上に楕円(だえん)の石碑が乗った形状で、はめ込まれた銘板には「あの難(かた)き日々 心に平和を」と刻まれている。

戦没者遺族らでつくる「太平洋戦争戦没者慰霊協会」によると、スーサイドクリフ周辺には、遺族や戦友会が設置した慰霊碑が数十基散在していたが、年月の経過とともに管理者がいなくなり、平成27年時点で9割以上が破損した状態で放置されていた。

新たな慰霊碑は壊れた数々の慰霊碑を集約する意味合いがあり、旗振り役を担った同協会顧問で保育園経営の中島健一さん(46)=埼玉県志木市=は「慰霊碑は貴重な歴史の証人。一つ一つを完全に保存することはかなわなくても、せめてしっかりとした形で残したかった」と強調する。

観光でサイパン島を訪れていた中島さんが27年にスーサイドクリフに登った際、慰霊碑の惨状に気づき、協会に連絡を取ったのが活動のきっかけになった。現地でダイビング用品店を営む浅井護人(もりと)さん(45)と建設会社を経営する鈴木謙太郎さん(67)の協力を得て、一部慰霊碑の修繕から始めた。

第2弾として慰霊碑の新設に取り掛かったが、スーサイドクリフ一帯は現地政府の公有地で、当局の許可が求められた。交渉役は浅井さんが担ったが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響も重なり、手続きが難航。工事開始は予定より1年以上遅れた。約400万円の工事費は募金活動でまかない、今年6月16日に完成にこぎつけた。

サイパン島には、日本政府が昭和49年に建てた「中部太平洋戦没者の碑」という公設の慰霊碑があり、厚生労働省が慰霊碑の掃除や敷地内の除草、巡回などを現地政府に委託している。一方、民間人が海外に設置した慰霊碑については「設置者が管理するのが基本」として、倒壊の危険が生じた場合を除き、原則関与しない立場を取っている。

戦没者慰霊に詳しい皇学館大の中山郁(かおる)教授(宗教学)は「遺族らの高齢化で、民間の自主管理に限界があるのは明らか」と指摘。「慰霊碑は現地と日本の歴史的な関係性を伝える役割も果たしている。戦没者の存在を忘れないためにも、国が主体的に維持・管理の道を模索していくべきではないか」と話す。

中島さんらはコロナ禍が収束するのを待って、現地で慰霊祭を催すことを模索しているといい、「再び日本人が島を訪れるようになったとき、碑の存在が戦争の事実を次世代につなぐきっかけになればいい」と期待を込めた。

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