日本組織に「金メダルかじり」的おじさんがはびこるワケ - イザ!

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日本組織に「金メダルかじり」的おじさんがはびこるワケ

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スポーツと関係のないことばかり問われる選手たち(画像:ゲッティイメージズ)
スポーツと関係のないことばかり問われる選手たち(画像:ゲッティイメージズ)

今から10年前の2011年7月末、女子サッカーのW杯で“なでしこジャパン”が初優勝を果たした際のことを覚えていますか。

凱旋したメンバーたちは連日テレビ番組に出演し、MCやレポーターたちから同じ質問を何度も何度も浴びせられました。

「結婚したいですか?」「彼氏はいますか?」「将来、子どもは欲しいですか?」──どれもこれもサッカーの内容とは全く関係ない、極めて個人的なことばかりです。

さらに、スタジオには「金メダルを取ってモテるようになりましたか?」という質問を、柔道家の塚田真希さんやレスリング選手の吉田沙保里さんに聞いたVTRが流れました。それはそれは不愉快極まりない演出だったものの、スタジオのMCやレポーターたちは大爆笑。「強い女=モテない」という悪意が漂うVTRを恥じることなく、ウケまくっていたのです。

私はとてつもない違和感と憤りを覚えたのですが、誰も何も言わないので「自分の感覚」に自信が持てませんでした。それでもやはり怒りが収まらず、当時、レギュラーで出演していたラジオ番組で、米国での女子サッカー選手のスタジオ出演時の扱われ方との違いを話したところ大反響! 「よくぞ言ってくれた!」というメッセージが殺到したのです。

そこで翌日は連載コラムに、さらに深堀した内容を書き公開しました。ここでも大大大反響を呼び、女性だけでなく男性たちからも「あれはヒドイ!」「あんなの会社でやったら即アウトだ!」「河合さんみたいな、女性じゃないと言えないなぁ。もっと言ってやれ!」と激励メールが殺到。あちこちのメディアからも取材を受けました。

さて、なぜこんな昔のことを書いているのか? お分かりですね。

そうです。“あのメディアの愚行”から10年がたった今もなお、女性のアスリートに敬意を払えない輩が存在する。

先日、社会的な立場のある人間が、金メダリストに失礼極まりない態度を取りました。そんな“しょーもない輩”(失礼とは思いますが、あえて書きます)の愚行を擁護する声もありました。

果たして、男性のメダリストにも同じことをするのでしょうか?

自分より社会的地位の高いメダリストにも、同じように“愛情表現”できるのでしょうか?

念のため、簡単に“事件”をおさらいしておきます。

名古屋市の河村たかし市長は、8月4日に表敬訪問に訪れた東京五輪・ソフトボール女子の後藤希友投手から、首に金メダルをかけてもらいました。すると河村市長は、「重たいなあ」と話した後で突然マスクを外し、「金メダルをかじる」というとんでもない行動に走ったのです。

4日夜に、「最大の愛情表現だった。金メダル獲得は憧れだった。迷惑を掛けているのであれば、ごめんなさい」とのコメントを出しましたが、5日には後藤選手の所属先のトヨタ自動車が「今回の不適切かつあるまじき行為は、アスリートへの敬意や称賛、また感染予防への配慮が感じられず、大変残念。河村市長には、責任あるリーダーとしての行動を切に願います」などとするコメントを発表する事態に発展。

これでやっと「事態の重さ」に気づいた河村市長は5日午後、会見を開いたわけですが、この会見の内容が「このお方は何のために会見開いたのだろう?」と脳内が「?」だらけになるコメントの連発だったのです。

「宝物を汚してしまい、配慮が足りなかった。コロナ禍にも不適切な行為だった」「金メダルに強いあこがれがあり、『これが金メダルか』と、とっさにやった」「あのときは非常にフレンドリーな感じだった」と、謝ってんだか言い訳してんだかワケのわかない言葉を連発。

さらに、セクハラではないか? との指摘に対しては、「嫌がらせの認識は全くなかった」「歯が食い込むようなかみ方はしていない。跡は付いとらんと思う」と、これまた意味不明の、言い訳にならない言い訳に終始したのです。

この時点で、レッドカード3枚分くらいの「しょーもなさぶり」を発揮した河村市長でしたが、実はその1万倍くらい「しょーもないこと」をやっていたという事実が発覚しています。

7日に東海テレビが表敬訪問の詳細を映像で伝え、約11分にわたる動画もネット上で公開したところ、後藤投手に対し、河村市長は「できゃ~な」(でかいな)という言葉を連発。さらには、「ぜひ、立派になっていただいて。ええ旦那をもらって。まぁ旦那はええか? 恋愛禁止かね?」などと、ニヤニヤしながら話しかけていたのです。

……まったく。こんな愚行のどこが“悪気はない”のでしょうか。

飲み屋で仲間うちで話しているわけじゃないのです。あくまでも公式の場で、一流アスリートの表敬訪問を受けた際に、「市長」という社会的地位のある人がとった行動です。せめて言い訳せず、謝ってほしかった。敬意を欠いた行動だったと猛省してほしかった。それすらできない“リーダー”がのさばっているのが、今の日本社会です。

おまけに“外野”は、「いや~、世知辛い世の中になったね~」だの「それくらい許してやれよ~」だのと擁護する輩も少なくなかった。

問題は時代じゃないし、「それくらい」という程度でもない。はるか昔から、こういうトンデモ発言に涙した人たちはたくさんいました。声をあげることもできず、嫌な顔をすることも許されず、ひたすら我慢したのです。

涙したのは女性だけではありません。男性たちの中にも「出世したけりゃ、早く嫁をもらえ」だの「まだ、子どもできないのか? 作り方知ってるのか?」だのと敬意なき暴言を浴びせられ、傷ついた人たちがたくさんいました。「笑ってやり過ごすしかない」という究極の選択を余儀なくされた人たちです。

そういう人たちのことを、1ミリも想像できない人たちがいる。「生きづらさ」という言葉の裏に潜むのは、「敬意のなさ」です。自分より“上”の人には絶対に言えないことを、“下”と見下した人には言えてしまうのです。

いずれにせよ、「悪意はなかった」「嫌がらせのつもりはなかった」という人たちの最大の問題は「コミュニケーション力の低さ」といっても過言ではありません。セクハラの多くが飲み会などで発生しているのも、「コミュニケーション力の低さ」が関係しているのです。

職場では、パワハラ、セクハラ、モラハラ、など、ハラハラだらけで部下とのコミュニケーションにビビっている“おじさん社員”が、自分のコンフォートゾーンである「飲み屋」に踏み入れた途端、職場でクローズしていたコミュニケーションの扉を全開する。が、何を話していいのか分からない。

そこで、つい「彼氏/彼女はいるのか?」というセクハラになりかねない発言をしてしまったり、下品なネタで笑いを取ろうとしてしまったり、カワイイ女性部下が素直に自分の話を聞いてくれると、「ん? ひょっとして……」などと“勘違い”してしまったり……。

その結果、「嫌がらせの認識は全くなかった」「最大の愛情表現だった」「あのときは非常にフレンドリーな感じだった」と、「だってだってあのときはさぁー」と悪意なきセクハラだったことを強調するのです。

日本のおじさんたちのコミュニケーション能力の低さは、かなりの問題だと私は感じています。

特に管理職などの役職に就くと、自分からコミュニケーションを取らなくても、部下から「報告」があがってくるので、コミュニケーション能力がなくてもなんとかなります。さらに、偉くなってくると、周りがヨイショ、ドッコイショの先回りコミュニケーションをしてくれるので、普段会わない人と会ったときに、何を話せばいいのか分からない。

その結果、「ええ旦那をもらって。まぁ旦那はええか? 恋愛禁止かね?」──といった愚かな質問しかできなくなってしまうのです。

厚労省が4月に公開したセクハラに関する調査でも、セクハラの多い職場の特徴として、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」という点があげられていました。

また、16年の調査では、セクハラ経験者が少ない職場には「職場にはお互いを助け合おうという風土がある」「職場は意見が言いやすく風通しがいい」「職場のリーダーは社員間の業務分担などをよくマネジメントしている」といった特徴があることも分かっています。

「悪意なきセクハラ」をなくすには、「誰もが意見を言いやすい職場づくり」を行うこと。

そして、上に立つ人は、年齢や性別、国籍に関係なく「敬意を払う」という当たり前のことを身につけてほしい。人格を磨いてください。

どんな業績をあげようと、どんなに生産性を高めようとも、最後に問われるのは人間性です。大切なのは「その人がどんな人間であるか」だけなのです。

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