現場医師緊急リポート(上)木村百合香医師 五輪開催したのだからと帰省や旅行考える前に、家族を「家庭内感染」の犠牲にしない行動を - イザ!

メインコンテンツ

現場医師緊急リポート(上)木村百合香医師 五輪開催したのだからと帰省や旅行考える前に、家族を「家庭内感染」の犠牲にしない行動を

木村百合香医師(写真)
木村百合香医師(写真)

 新型コロナウイルス感染症の第5波が列島を襲う中、お盆休みの移動自粛の声がなかなか届かない。“医療崩壊”寸前といわれる現場から、公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長の木村百合香医師が緊急リポートを寄せた。 (取材・構成 長田昭二)

 今年のお盆休みも「コロナ禍」で迎えることになりました。多くの方が、「今年こそ」と帰省や旅行を楽しみにしていたことでしょう。本当に残念です。

 なかには「オリンピックを開催したんだから」「パラリンピックを開催するんだから」と、帰省や旅行を実行しようと考えている人もいると思います。そんな方々に、ぜひ聞いていただきたいことがあります。

 私の勤務する東京都保健医療公社荏原病院は、「新型コロナウイルス感染症重点医療機関」として、早くから感染者を受け入れてきました。そして第5波を迎えたいま、いよいよコロナ病床のパンクが、現実のものになりつつあるのです。

 コロナ禍の初期、病院の廊下まで患者があふれた、野戦病院のような悲惨な光景を映し出す海外のニュース映像をご覧になった方は多いと思います。私もあの映像を見て戦慄が走りました。ただ、一方で「現代の日本ではあのような状況を引き起こすことはないだろう」と信じてもいました。

 しかし、現在の爆発的な感染拡大の前では、いよいよ覚悟を決めなければならないようです。

 これまでの新型コロナの犠牲者は高齢者が中心でした。しかし、ここに来て40代や50代という働き盛りの死亡例が増えています。重症例で見れば30代も珍しくなくなり、私も20代でコロナから重篤な合併症を引き起こした患者さんを診ました。

 つまり「変異株」の前では、年齢や世代などの要因は意味を持たなくなってきているのです。

 病気にかかって命を落とすまでの間には、いくつかの段階があり、その段階ごとに患者さん自身と家族が死を受け入れるための“儀式”があります。それを経て、お互いに気持ちを整理し、感謝し合い、最後のお別れへと進んでいくのです。

 ところが新型コロナにはその“儀式”がありません。重症化して人工呼吸器につながれた患者さんは、ご家族との連絡を断たれます。お見舞いもできなければお別れもできないまま、最悪の場合、息を引き取ることになるのです。

 大切な家族との関係を強引に、非情に断ち切っていく新型コロナウイルス。患者さん自身が不本意であることはもちろんですが、ご家族にとっても決して容認できないことであるはずです。

 しかも、ここが大きな問題なのですが、亡くなる患者さんのすべてが、どこか(外出先)でウイルスに感染したわけではありません。ならばなぜ感染したのかと言えば、同居する家族の誰かが外出先で感染し、それを持って帰って感染させてしまう「家庭内感染」の犠牲者であることが稀(まれ)ではないのです。

 若い人が遊びに出かけて、あるいは飲みに行ってもらってきたウイルスを家族に感染させてしまう。結果としてうつされた家族が重症化したり死亡したりして、感染源となった人が後悔する-という状況を、私は何度も見てきました。家族として、これほどつらい出来事はないでしょう。

 そんな悲惨な経験をしないためにも、このお盆休みの外出を何とか思いとどまってほしい-。これが私の切なる願いなのです。 

 ■木村百合香(きむら・ゆりか) 公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院耳鼻咽喉科医長。1998年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大耳鼻咽喉科入局。東京都健康長寿医療センター勤務を経て、2015年より昭和大学医学部耳鼻咽喉科准教授。17年から現職。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医・専門研修指導医・補聴器相談医、日本気管食道科専門医他。医学博士。

zakzak

  1. 市から突然1300万円請求…なぜ? 年金生活の80代女性に 専門家「今後数年で同様の高額請求を受ける人は増える」
  2. コロナ収束後、「ないままでいい」飲み会 3位「新年会」、2位「会社の定期飲み会」、1位は?
  3. たばこ値上げ、約61%が「禁煙しない」 決意する価格は?
  4. 高市氏の記者会見場で報道関係者怒鳴り声