年会費かかるも会員数100万人超え…「モンベル」が多くの人を惹きつける理由

SankeiBiz

信頼を築く「ファンド」

根強い支持を集める要因はさまざまだ。生産コストを抑えて生み出すコストパフォーマンスの高い製品、アウトドアフィールドで市場を作り出すというユニークな店舗展開は業界でもよく知られている。そのうちの一つに、売り上げに直結しないが、ユーザーとの強いつながりが感じられる企業活動がある。「モンベルクラブファンド」という独自の基金制度だ。

1500円の年会費から50円がファンドに回され、自然環境保護や社会活動に利用される仕組み。モンベル会員となることが社会貢献に寄与することにもなっているのだ。

ファンドの対象となる事業や活動は多岐にわたるが、中でも社会的に大きく注目されたのは、「アウトドア義援隊」として被災地にテントや寝袋などの物資を支援する活動だ。1995年の阪神淡路大震災での支援をきっかけに、2011年の東日本大震災などこれまで数多くの災害支援にあたっている。社員もボランティア活動に積極的に参加する姿が、メディアでも数多く取り上げられた。こうした活動が会員の継続率向上や新規入会の増加に与える影響は少なくなかったという。

「アウトドア義援隊」の活動の様子(モンベル提供)
「アウトドア義援隊」の活動の様子(モンベル提供)

収益の中から社会活動に還元するというのではなく、あくまでもモンベルクラブの会費で行うことにこだわる。「ファンドを通じた取組みに賛同してもらえるかどうかは、“企業市民”としての信任を測る上で重要なこと。その点でモンベルの進む方向性を確かめるバロメーターでもある」と竹山さんは語る。

企業としてのサステナビリティ

モンベルは今後、アウトドア用品の企画・製造・販売の領域を越え、自然環境への意識向上や自然災害への対応力、エコツーリズムを通じた地域経済活性など、さまざまな分野に活動範囲を広げる方針を掲げている。幅広いテーマ設定だが、「モンベルだからこそ果たせる使命がある」(竹山さん)という。

常務取締役広報本部長の竹山史朗さん(モンベル提供)

「普段からアウトドアの体験や遊びを通して経験を積むことでアウトドアのスキルを体得しておけば、個人の防災力、ひいては地域の防災力の向上になる」

長年の義援隊活動で得た経験から、災害発生前の備えや安全避難、装備の使い方や公的支援の申請まで具体的なノウハウを、今秋出版予定の「モンベル式 防災術」という一冊の本にまとめた。

竹山さんは「多くの利益を上げても、その事業が社会に認められないものなら、いずれ消滅する。逆にいかに素晴らしい活動であっても、経済バランスのとれない事業もまた継続できない」と強調する。

そこには、企業としての持続可能性を具現化する一つのモデルがあった。

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