心臓や肺と並ぶ最重要臓器「脳」。ここに起きる病気や外傷は命に直結するだけでなく、日常生活の質を大きく左右する。そこで今週は国際医療福祉大学成田病院に在籍する5人の脳神経外科医に、「脳の病気とケガ」について日替わりで解説してもらう。
第1回に登場するのは、同大脳神経外科統括主任教授の松野彰医師で、テーマは「治る認知症、予防できる認知症」。
長寿国家とともに超高齢社会に突入した日本では、「介護」が誰にとっても身近な問題になっています。
介護が必要となる理由を見ると、「脳血管疾患」(脳卒中など)の25・7%を筆頭に、「高齢による衰弱」の16・3%、「骨折・転倒」の10・8%に次いで、「認知症」が10・7%と僅差で続きます。
脳の中の「海馬(かいば)」という器官が萎縮していくことで起きる認知症は、いくつかの種類に分類できます。
アミロイドβやタウという異常なタンパクが脳に溜まることで引き起こされるアルツハイマー型認知症、脳出血や脳梗塞などによって脳の血液循環が悪化して脳の一部が壊死して起きる血管性認知症、脳の神経細胞に特殊なタンパクが蓄積してできる「レビー小体」という物質によって神経細胞を衰えさせていくレビー小体型認知症などが知られています。
これらの認知症の治療は服薬が中心で、これまでは「進行の抑制」が治療の目的でした。しかし、今年新たに承認された「アデュカヌマブ」という新薬は、アルツハイマー型認知症の初期なら「症状改善」も見込めるようになったのです。
アルツハイマー型認知症は、運動やバランスのいい食生活などが予防効果を持つことも分かっています。必要以上に怖がるのではなく、日々の予防対策には、ぜひ取り組んでください。