ネットフリックスは「伸び悩んでいる」は本当か? ゲーム参入でも踏襲する“必勝パターン” - イザ!

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ネットフリックスは「伸び悩んでいる」は本当か? ゲーム参入でも踏襲する“必勝パターン”

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写真はイメージ(提供:ゲッティイメージズ)
写真はイメージ(提供:ゲッティイメージズ)

これまで何度も“伸び悩み”というキーワードで、将来の成長性に疑問を投げかけられ、そのたびにアナリストの懸念を吹き飛ばしてきたネットフリックス。だが、そろそろこれまでの勝ちパターンは通用しなくなってきているのではないか? という指摘が繰り返されている。

7月下旬、加入者増のペースが鈍化したこと、ゲーム事業への参入を明らかにしたことが報じられ、そうした懸念が再び高まっている。本業である映像配信事業が伸び悩んでいることが、彼らを本業ではない、言い換えればリスクが高い別ジャンルの事業へと駆り立てているのではないか、という見方だ。

そもそもネットフリックスは、伸び悩んでいるのだろうか? ゲーム事業への参入もリスクがないとはいえないが、彼らには、デジタルエンターテインメントへの感度が高く、映像作品に強い興味を持つ2億人の有料会員がいる。

映像作品のキャラクターや世界観を活用し、複数メディアに展開するビジネスは、ここ数年、ハリウッドの映画スタジオなども取り組んでいる。その上、ネットフリックスには、映画会社やテレビ局と違って安定した、しかもゲームとの親和性が高い有料会員がいることは考慮せねばならない。

ネットフリックス成功の源泉

ネットフリックスが成功した源泉は、安定した会員からの収入だ。彼らはその成功モデルを、時代に合わせてカスタマイズしてきた。映像制作・配信に加え、ゲーム配信でも成功すると考えるのは、彼らが成長してきたパターンを踏襲しているからに他ならない。

同社は当初、郵送ベースのDVDレンタルをWebから手軽に行えるサービスで成功。米国にあった店舗型ビデオレンタルチェーン最大手ブロックバスターからシェアを奪って急成長した。社名に「ネット」というキーワードはあるが、現在のようにネットで映像を配信するサービスではなかった。

そんなネットフリックスがさらなる成長のチャンスをつかんだのは、映像作品をネット配信する事業へといち早く投資したからだ。国土の広い米国では店舗型より、Web予約で郵送するサービスが便利だったが、即時性は低い。会員の「今すぐに観たい」ニーズに応えるため、プラス料金がかかるオプションサービスとして配信事業を始めた。

2007年からは料金固定型の映像配信事業をメインの事業に据えた。映像コンテンツを日常的に楽しんでいる、しかもクレジットカード情報を預けている会員を抱えることが、何より彼らの強みだった。

加入者の月額料金は安定している。多少、景気動向の影響を受けたり、ライバルとの競争にさらされたりしても、いきなり会員が数割減るといったことは考えにくい。言い換えれば、予算編成を行いやすい。

そんな固定化された収入を基に、ネットフリックスは顧客満足度を高め、より多くの会員を集めることに注力してきた。安定した会費収入を配信するコンテンツの調達に使うことでカタログの質を高め、その結果として加入者が増加し、さらに独自コンテンツへの投資余力が高まるという、プラスのスパイラルを繰り返した。

金の卵を生み出し始めたオリジナル作品

12年になると、オリジナル作品への積極的な投資を始めた。

映像作品の製作事業は本質的にギャンブル性が高い。劇場で鳴かず飛ばずともなれば、大きな投資を行った話題作はお荷物となる。DVDが普及してからは、放送も含めて投資回収の機会は増えたものの、DVDが大きな収益をもたらしたことで、かえって超大作への投資がエスカレートし、ギャンブル性が高くなった時期もあった。一時、人気作の続編やリメークが大量に生まれたのも製作投資が回収できなくなるリスクを下げるためだ。

しかし本来、映像作品へのニーズは多様だ。ネットフリックスは安定した収益源で、一時的な人気ではなく顧客満足を高めるカタログ作成を行っていた。さらにオリジナル作品にも投資することで、会員の満足度を高め、また新規顧客を獲得するためのカタログ作りについても、さらに踏み込んだのだ。

ネットフリックスのような会員制サービスにとっての収益向上とは、大人気作となって劇場に多くの人が集まり、あるいはパッケージ販売が爆発的に伸ばすことではない。あくまでも着実に会員数を伸ばしていくことだ。

会員たちがどのような作品をどのようなキーワードで検索し、繰り返し視聴しているのか──。そうした点に着目し、連続ドラマにしても、過去の映画カタログにしても、視聴傾向を見ながら、大ヒット作ではなく確実に観たいと思ってもらえる作品を自ら製作するようになった。

オリジナル作品、あるいは独占配信権を獲得したコンテンツであれば、視聴者はその配信業者で観るほかない 。

ネットフリックスがオリジナル作品を配信し始めて以降、同社の事業運営コストの約半分は、コンテンツの減価償却費に充てられ、会員収入が増えれば増えるほど作品への投資を続けた。15~16年の営業利益率は5%以下の水準だったが、17年ごろから高まり、20年12月期には18.3%に達した。

オリジナルコンテンツは、あらかじめ組まれた予算で製作できる。また会員数が十分に多ければ超大作映画並みの投資も継続が可能だ。しかも会員数が増えたとしても、ライセンス料金が増えることはない。なぜなら自分たちで製作しているからだ。

実際にはオリジナル作品の場合でも、再生回数と連動したライセンス料を支払うケースもあるが、完全な外部調達に比べれば変動幅は小さい。オリジナル作品が増えるほどコスト変動幅は小さくなり、経営リスクは下がる。今後、ネットフリックスの経営はさらに安定していくだろう。

ゲーム配信は必勝パターンを踏襲

同社がゲーム配信へと向かい始めたのは、映像コンテンツの配信で高収益が見込めるようになり、さらに会員基盤を強固にする“次のステージ”に入ったためだ。

営業利益率が17年から増加し始めたと述べたが、営業キャッシュフローがプラスに転じたのは今年(21年)になってからのことだ。このタイミングでゲームへの投資を行うのは理にかなっている。

これまでの戦略は、まだネットフリックスに加入していない消費者層に訴求するため、オリジナルの映像作品に投資をすることだった。

例えば、北米で一時的に会員数が伸び悩み始めたときには、より幅広い視聴者層への拡大をコンテンツ投資戦略を通じて進めてきた。黒人コミュニティーの歴史や文化に根ざしたコンテンツや、ヒスパニック系住民の文化を意識したドラマにも投資したりするなど、生活スタイルや文化の違いをカタログ構成に反映し、加入率が低かった消費者層にも訴求した。

さらに北米市場の飽和が見えてくると、海外での現地製作に力を入れるようになった。映像作品は、国ごとに好まれる作品の傾向が異なるためだ。

日本では東宝と提携し、スタジオを運営することを発表済み。韓国でも多額の製作予算を投入するニュースが話題になった。グローバルに広がる現地製作の波は、コロナ禍で一時的に減速していたが、制作進行のペースが戻って来れば、会員数増加の余力はまだあるだろう。

ネットフリックスの会員数が2億人を超えた現在、この必勝パターンはまだ止まりそうにないが、彼らの強みをさらに強化するのがゲーム配信だ。

映像作品とゲームは親和性が高く、映像作品のゲーム化、人気ゲームの映像化。その両方のパターンで成功例がある。しかも同社の場合、ゲーム配信のプラットフォームと映像配信のプラットフォームを共通化させることで、あらためて顧客獲得を行う必要もない。

ライバルはほぼ同等の会員数を持つアマゾンになるだろう。映像配信でも競合する同社は、クラウドゲーミングサービス「Luna」(ルナ)を発表している。しかし現実的なライバルはYouTubeかもしれない。

なぜなら、ネットフリックスが没入感重視のコアなゲームファン向けのコンテンツを配信するとは考えにくいからだ。詳細は明らかではないが、映像作品のファンコミュニティーに根ざしたカジュアルなゲームが中心になっていくだろう。

著者紹介:本田雅一

ジャーナリスト、コラムニスト。

スマホ、PC、EVなどテック製品、情報セキュリテイと密接に絡む社会問題やネット社会のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジー、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析・執筆。

50歳にして体脂肪率40%オーバーから15%まで落としたまま維持を続ける健康ダイエット成功者でもある。ワタナベエンターテインメント所属。

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