【男性医学の父が語る オリンピックとセックスチェック】性別を決めるのは? 性器ではなく性ホルモン値 - イザ!

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男性医学の父が語る オリンピックとセックスチェック

性別を決めるのは? 性器ではなく性ホルモン値

 かつて国際的なスポーツ大会で行われていたセックス・チェック。なぜ女子選手のみが対象だったのか? 引き続き、専門医で札幌医科大学名誉教授の熊本悦明氏に聞く。

 「スポーツは、技もさることながら、力の象徴的表現であると言えるでしょう。その力の根源は、体格と筋力。その点、男性ホルモン=テストステロンは、骨格や筋肉の発達を強力に推し進め、体格と筋力を強化します。さらにテストステロンは攻撃的、積極的な性格とも関係していますから、その分泌源である睾丸を持っているといないとでは、スポーツ能力に差が出てくるのは当然。そこで睾丸のない女子は、ルール上、男子とは別のグループで成績を競い合っていたのです。まちがって女子選手のなかに睾丸のあるものが参加すると公平性さを欠くため、女子選手のみにセックス・チェックが行われていたわけです」

 一方、男子として登録している場合には、この種の問題はない。もし卵巣しかなく、性器が男性的と誤認された選手がいた場合でも、むしろ睾丸を持つ男子にくらべ、マイナスの要素にしかならないからだ。

 男性半陰陽の事例が時々報告されたことが契機となり、オリンピックをはじめとする国際スポーツ大会ではセックス・チェックが行われ、1大会で2~3人ほど、疑わしい選手が発見され、競技前にケガをしたとして出場を見合わせるなどの対応がなされていた。

 「このような純医学的なオリンピック委員会の発想に対し、比較的先進国参加の多い国際陸連グループから、女性選手のセックス・チェックは人権問題であると強い提起があったのです。まさに医学か人権かの間に大きなぶれが生じ、セックス・チェック中止を巡ってローザンヌ本部で医学関係者の検討会議が開かれ、私も参加してその重要性を力説した思い出があります」

 「本人に罪の無い自然な形でのドーピングをどう解釈するか、女子の人権問題もからんで社会的な大議論となり、その折はもう少し続けるとの結論が出されましたが、女性側からの人権主義的意見が強くなり2012年のロンドン五輪から取りやめになりました」

 世界的にみて、五輪参加国の医療状況からいえば、出生時の男性半陰陽で性判定が女性とされる可能性のある国も未だ少なからずあり、当然女子として参加してメダルを手にする可能性はある。

 「男女性別の医学的問題は、ぎりぎりの分岐点の所では極めて複雑。たとえば、胎児期の女性形からテストステロンシャワーを浴びて男性化する機序では、内性器の起源となるウォルフ管が発達すると精嚢になり、腟になるミューラー管は退化し消失すると言われていました。しかし、私の教え子の古屋聖兒先生の調査では、健常男性の16%にミューラー管、簡単にいうと膣の残基が存在していたのです。内性器の完全な男性化はかなり難しいと言えます」

 「かつてヘルニアの疑いで受診した女性を診断した際、鼠けい部に未発達の睾丸が見つかったこともありました。これはテストステロン分泌されていたが、受容体が機能していなかった症例です。他にもY染色体がなくてもX染色体の上にY遺伝子がのっかっていて睾丸を持つケースもあります。性器、染色体、性ホルモン、レセプター、脳の性分化など多様な観点で性は構成されています。あくまでも泌尿器科医の立場で、スポーツ競技で男女を分けるなら、性器ではなく性ホルモン値。運動能力への影響力を一番に考慮すべきだと思います」

 東京五輪では男性から女性に性転換したトランスジェンダーの選手が初参加予定で、メダルが期待されている。  (取材・熊本美加)

 ■熊本悦明(くまもと・よしあき) 1929年、東京生まれ。札幌医大名誉教授、みらいメディカルクリニック(東京都文京区)名誉院長。東京大医学部卒業後、同大講師(泌尿器科学講座)を経て、米カリフォルニア大ロサンゼルス校へ留学。68年に札幌医大医学部秘尿器科学講座主任教授に就任し、日本メンズヘルス医学会、日本性感染症学会を創立。『アダムとイヴの科学』(光文社)、『男はなぜ女より短命か?』(実業之日本社)など著書多数。

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