【男性医学の父が語る オリンピックとセックスチェック】スポーツ競技の性別チェックにつらい歴史 64年東京五輪で疑惑の女性を診断、過剰に男性ホルモン分泌される副腎性器症候群発見 かつては女性のみが対象で差別的 - イザ!

メインコンテンツ

男性医学の父が語る オリンピックとセックスチェック

スポーツ競技の性別チェックにつらい歴史 64年東京五輪で疑惑の女性を診断、過剰に男性ホルモン分泌される副腎性器症候群発見 かつては女性のみが対象で差別的

 「ジェンダー平等の推進」をうたった東京五輪が開かれる。それは良いことだが、スポーツ界において男と女の性差判別には長い歴史と苦悩があった。前回、内分泌医学の専門医・熊本悦明氏(札幌医科大学名誉教授)は、全ての人間の胎児の原型は女であるが、胎児期と二次性徴期で男性ホルモン=テストステロンによって男へ創りかえられると解説した。

 「『性分化』には何段階も女から男に創り変える工程があります。全体としてどちらの比重が大きいかで総合的に男女の別が生じてきますが、100%男として女として成熟するほうがまれ。2つの性はつながっているグラデーションでニュアンスが含まれているほうが自然です」(熊本氏)。

 スポーツ競技においてさえ、生物学的に何をどう持って男女を分けるのか、複雑な問題をはらんできたと言う。

 「かつてオリンピックをはじめとする国際競技では、女としてエントリーした選手が男だったというケースを見つけるため“セックス・チェック”がありました。しかも女子選手だけが受けていたのです。今振り返ればとても差別的です。しかし、睾丸はあるものの胎生期に性器が完全に男性化しない『男性半陰陽』で、女子と判定されてしまった選手が存在していたのは事実です」

 かなり昔の話だが、1932年と36年のオリンピックに陸上選手として出場し、金、銀メダルをいくつか手にした女性のメダリスト、ステラ・ウォルシュさんは、殺害され、死体解剖した際、睾丸が発見されたと報道された。

 「このように生まれる前に外性器の性分化がしっかり女性型を男性型に創り変えきれない男性半陰陽は、医師のいないローカルな地域では、お産婆さんが生まれたばかりの赤ちゃんの外性器をぱっと見て『オチンチンがない』と、その子を女と判定してしまう。もちろん、本人は女として生きていきます。しかし、成長して思春期になると、不完全ながらも持っている睾丸からテストステロンが分泌され、体力は平均女性より高く、運動能力にも優れて、スポーツ選手として頭角を現すようになる方も出てくるのです」

 セックス・チェックは、1964年の東京オリンピックではなかったが、疑わしい女性選手がいると相談を受け熊本氏が診断したところ、副腎から過剰に男性ホルモンが分泌される副腎性器症候群であった。その後、68年メキシコシティ大会からセックス・チェックは導入され、72年の札幌大会で熊本氏はセックス・チェックの責任者として携わり、男性半陰陽のケースを1例発見することになった。

 「口腔の粘膜を採取して、染色体を調べました。XYなら男、XXなら女ですが、女性選手なのにY染色体があり、詳細な検査で睾丸の存在がわかりました。『今日の練習で転倒してケガを負ったことにして、試合には出ないように』と、つらい宣告をしたことは、今でも忘れられません…」

 出生時の性別判断のいい加減さによって人生を狂わされるほどの悲劇が起きてしまったケースは少なくない。本人にとっては青天の霹靂(へきれき)で相当ショックな話であったに違いない。

 スポーツにおける公平性とアスリートの性的アイデンティティーの問題にはさまざまな議論が今も続いている。

 ■熊本悦明(くまもと・よしあき) 1929年、東京生まれ。札幌医大名誉教授、みらいメディカルクリニック(東京都文京区)名誉院長。東京大医学部卒業後、同大講師(泌尿器科学講座)を経て、米カリフォルニア大ロサンゼルス校へ留学。68年に札幌医大医学部秘尿器科学講座主任教授に就任し、日本メンズヘルス医学会、日本性感染症学会を創立。『アダムとイヴの科学』(光文社)、『男はなぜ女より短命か?』(実業之日本社)など著書多数。

zakzak

  1. 日本、韓国のTPP加入「拒否」へ 「元徴用工」への異常判決に対抗措置
  2. 高市氏の記者会見場で報道関係者怒鳴り声