マツキヨ・ココカラ不振の裏で、「肉・魚・野菜」の販売にドラッグストア各社が乗り出す納得の理由 - イザ!

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マツキヨ・ココカラ不振の裏で、「肉・魚・野菜」の販売にドラッグストア各社が乗り出す納得の理由

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出所:経済産業省「商業動態統計年報(2020年)」、下部表は同統計を基に筆者が作成
出所:経済産業省「商業動態統計年報(2020年)」、下部表は同統計を基に筆者が作成

ドラッグストア業界は、コロナ禍における巣ごもり需要の追い風を受けて、順調に売り上げを伸ばした。経済産業省の商業動態統計年報によれば、2020年の市場規模は前年比6.6%増の7兆2840億円となったようだ。その内訳としての商品別売上増減率を見ると、外出機会が減ったことで化粧品周りが大きく落ち込んだものの、マスク、消毒関連などがけん引したヘルスケア用品、食品、雑貨類が大幅に伸びたことが分かる。

まさにコロナ禍という特殊要因の影響が、如実に表れた結果といっていいだろう。出そろいつつある20年度の大手ドラッグストアの決算をみても、軒並み増収増益となっており、減収減益はマツモトキヨシHD、ココカラファインの2社だけである。

こんなことを書くと、マツキヨ、ココカラの両社に何か問題があるのかと思われてしまうかもしれないが、業界最大手グループとなった両社の株価は上昇トレンドにあり、市場での評価は決して悪くない。それでもなぜ、直近の決算で不調だったのか。前述の商業動態統計には都道府県別の販売額統計もあるのだが、これを見ると、追い風を受けたように見えるドラッグストア市場だが、東京・大阪・沖縄には逆風が吹いていたことが分かる。

ご存じの通り、コロナ禍において急速に進んだテレワーク化などにより、オフィス街の昼間人口は大きく減少した。また、インバウンド需要が消失したことも相まって、東京・大阪・沖縄のドラッグストア市場がマイナスになっているようだ。マツキヨ、ココカラといえば、特に東京・大阪といったエリアに多くの店舗を展開する都市型ドラッグストアであることで知られているが、この逆風の影響が両社を直撃したのである。

また、この両社の商品構成がインバウンド需要の高い化粧品に強いというのもあり、ダブルパンチだったということなのだろう。ちなみに、先ほどの表で見ると、次いで伸び悩んだのが北海道、京都という観光に強い地域であり、まさにコロナの影響に大きく左右された年であったことがうかがえる。

業績好調だった多くのドラッグストアの中でも、食品や雑貨類を幅広く品ぞろえする食品強化型がその存在感を増しているといわれている。大都市周辺に住んでいる人にとってドラッグストアといえば、まさにマツキヨ、ココカラのような化粧品、医薬品を中心としたタイプを思い浮かべると思うが、地方では化粧品、医薬品を取り扱っている食品スーパーといったタイプのドラッグストアが増えつつあるのだ。

コスモス薬品(福岡市)、クスリのアオキ(石川県白山市)ゲンキー(福井県坂井市)といった上場企業をはじめ、非上場企業でも売り上げが1000億円を超える企業としては、ドラッグストアモリ(福岡県朝倉市)や、ツルハグループ傘下の杏林堂(浜松市)があり、サンドラッググループ傘下のダイレックス(佐賀県佐賀市)などもこのジャンルといっていいだろう。

都市型の代表格マツキヨ、ココカラと食品強化型のコスモス薬品、ゲンキーの売上構成を比較すると一目瞭然だが、都市型では1割前後の食品売上構成比が、食品強化型では6割前後となっており、同じ業態とは思えないほどに異なっている。ただ、地方においてはこの食品強化型が、10年以上も前からじわじわと勢力拡大してきているのである。

もともと、ドラッグストアという業態を世に広めたのはマツキヨであり、ヘルス&ビューティー(医薬品+化粧品)というドラッグストアを首都圏の駅前に展開して、国内最大手の地位を築いてきた。ざっくり端折っていうと、地方ではこのスタイルを基に、アレンジしたドラッグストアが各地で勃興した。

しかし、地方には大都市部のように人通りのある駅前や繁華街があまりないため、クルマの通るロードサイド沿いに店舗を出店するしかなかった。

ロードサイドを通りすぎるクルマを停めて、店舗に入ってもらうには、消費者に対して何らかのメリット提供が必要だった。地方のドラッグストアの中には購買頻度の高い食品のディスカウント販売を行うことによって、女性客の来店動機を作ろうとする試みがあり、それは見事にうまくいった。

食品強化型ドラッグストアは、食品、日用消耗品などのディスカウント販売によって客の足を止めさせ、ついでにメイン商材である医薬品や化粧品を買ってもらうという手法を生み出し、地方の女性客の支持を得ることに成功したのである。

次の図は、食品強化型ドラッグストアの代表格であるコスモス薬品の商品別の粗利益率と販管費率(共に分母は売り上げ)を比べたものだが、食品に関してはデータ上ほぼ利益はなく、ついで買いの医薬品、化粧品で稼いでいることが分かる。まさに食品を“まき餌”として集客し、医薬品、化粧品といった収益商材を買ってもらうビジネスモデルを確立しているといっていいだろう。

さらにいえば、食品強化型ドラッグストアの食品まき餌作戦がうまくいったのは、ただ食品の低価格が支持されたという理由だけではない。集客商材として食品を強化したことによって、「生活必需品ワンストップ」という消費者ニーズを結果として実現していたからだ。

ワンストップショッピングとは、1カ所の店でなるべく欲しいもの全てを買いそろえられた方が便利である、という買い物に関するニーズに基づいた概念だ。この手のドラッグストアは、食品、飲料、酒類、キッチン・バスといった日用消耗品、さらにはペットフード、化粧品、医薬品などがワンフロアにそろっている。日々の消耗品補充のための買物が全て済んでしまう上に、価格も安いのである。

というと、「そんなの大型総合スーパーと何が違うの?」と思う人もいるだろうが、ちょっと違う。

食品強化型ドラッグストアが抱えるメイン顧客のイメージは、軽自動車に乗って通勤する共働き世帯の主婦層であり、とにかく時間がない。子育て中の共働き主婦はとにかく忙しく、朝から晩まで仕事と家事に追われているので、消耗品の補充といったルーティーン作業は短時間で済ませたいという人が大半なのだ。その場合、大型スーパーの広大な駐車場、多層階で広すぎて移動時間のかかる売り場、などは、全てNGだ。

店前の平置き駐車場にサッと止めて、食品スーパーより少し小さめのワンフロアを一周して今日の補充品が全てそろう、という時短を実現している食品強化型ドラッグストアこそ、こうしたターゲットを捉えているのである。

こうしたオールマイティーな生活必需品ワンストップショッピングニーズに最も適している食品強化型ドラッグストアにとって、唯一の弱点は生鮮食品の取り扱いだといっていいだろう。

生鮮食品は鮮度管理とロス管理が難しく、このノウハウに関して絶対的な強みを持っているのは食品スーパーであることは、いうまでもない。鮮度を重視するといわれる日本の消費者のニーズに対応するためには、生鮮売場の背後に一定規模のバックヤードを設けて、その日提供する商品は当日、流通加工(顧客単位に切り分けて、パック詰めするなどの最終加工)をするのが一般的なやり方なのだが、この手法は店舗ごとのバックヤード設備と加工人員というコスト負担がばかにならない。

その上、生ものであるがゆえに、売れ残れば廃棄ロスに直結するリスクがあるため、スーパー以外の店が簡単にコピーできるノウハウではないとされている。こうした理由から、食品強化型ドラッグストアの大半が、生鮮を除いた食品提供(メーカーが作った食品)にとどまっているため、生活必需品ワンストップが完全実現されているわけではないのが現状だ。さまざまな企業がこのハードルをどのようにして超えるかについて、チャレンジを繰り返している最中だといっていいだろう。

自社でプロセスセンターを構えるゲンキー

この課題を正面突破しようとしているドラッグストアが、福井出身のゲンキーだ。

同社は、生鮮の流通加工を担うプロセスセンターをドラッグストアとして初めて稼働させた。生鮮流通加工を集中化して地域ごとに配送することで、バックヤード作業によるコストアップを排除し、生鮮を提供する手法にチャレンジし始めている。

競合ドラッグストアでも、生鮮売場を備えた店舗を展開する企業はあるが、あくまでコンセッショナリー(=生鮮テナント)方式であり、自社で運営するリスクを内包するのは、ゲンキーが初めてだ。20年6月期にこうした取り組みをスタートしてから、売り上げは順調に伸びており、直近の21年6月期第3四半期決算でも、対前年比売り上げは20%増、営業利益も90%増という実績を計上しており、コロナ禍の追い風参考記録だとしても、成果を出していることは間違いない。

アフターコロナにおいて、このような好調な業績が続くかどうかは分からないとはいえ、こうしたプロセスセンター投資を伴ったゲンキーの積極的なチャレンジは、完全な生活必需品ワンストップを完全実現させる可能性があり、大いに注目すべき取り組みだといっていいだろう。

「ヤバい」地域に殴り込むクスリのアオキ

一方、ゲンキーとは違う手法で、生鮮取り扱いを強化しようとするのが、クスリのアオキだ。同社は生鮮の取り扱いノウハウを持った食品スーパーを買収して、生鮮を品ぞろえしたドラッグストアに転換していくという戦略を実施している。

同社は従来、生鮮をコンセッショナリー方式で導入した食品強化型ドラッグストアを展開して急速な成長を遂げて、今や大手の一角にのし上がったことで知られる。ただ、その勢力圏が北陸、中部へと拡大して、今や北関東にまで及ぶようになって、若干その勢いが鈍っていることが明らかになっている。

その理由としては、コンセッショナリー方式で高速出店を行うと、優秀な生鮮テナントの確保が難しく、その技量にばらつきが出ている点にあるようだ。

バックヤードで流通加工を行う方式を維持しようとすると、出店に際して人材確保の難しさがハードルになることは理解できる。ここからは大いに私見が入るが、北関東という地域は食品スーパーの国内最激戦地であり、ヨークベニマル、ヤオコー、ベルク、ベイシア、アクシアルグループなど、日本最強クラスとされるスーパーが干戈を交え、地場企業もその中を生き抜いている強者ぞろいの「ヤバい」エリアなのである。

ここで彼らと同じ土俵で戦うことはそう簡単にはいかない。例え、買収したスーパーのノウハウを活用したとしても、サッカーJ1のリーグ戦にJ3チームを買収して参戦するようなものではないか、と懸念するのである。ただ、この取り組みも始まったばかりであり、今すぐに成果をうんぬんすべきではなく、長い目で見ていく必要がありそうだ。

「ラストワンマイル」の生鮮食品がカギを握る

消費者の生活必需品ワンストップショッピングのニーズに関しては、既に顕在化しており、食品スーパー、ドラッグストア、ホームセンターなど、関連する業態の企業は、認識しつつもその完全実現には成功してはいなかった。EC化の進む時代となっても、食品、特に生鮮食品に関しては、ECシフトからは一番遠い商材だといわれており、実際、コロナ禍の非接触ニーズの中でも、リアル食品小売はその健在ぶりを示している。

ただ、コロナ禍による追い風が消失すれば、地方を中心に人口減少高齢化などによる市場縮小で、リアル小売業の競争激化はこれまで以上に厳しくなることは避けられない。そうなったとき、生活必需品ワンストップという、顕在化してはいるが対応しきれていないニーズに適合する企業が生き残る可能性は高い。今できないからといって座していたなら、100年たっても1000年たっても対応不可能なままだが、難しくてもチャレンジする企業には10年後の実現可能性が生まれる。たとえ今、実現できていないとしても、果敢に新たな取り組みを行っている食品強化型ドラッグストアの中から、きっと10年後の生き残り企業が生まれるに違いない。

著者プロフィール

中井彰人(なかい あきひと)

メガバンク調査部門の流通アナリストとして12年、現在は中小企業診断士として独立。地域流通「愛」を貫き、全国各地への出張の日々を経て、モータリゼーションと業態盛衰の関連性に注目した独自の流通理論に到達。

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