【スポーツ医学から見た東京五輪】究極肉体改造“遺伝子ドーピング” 運動能力は「遺伝70%、環境30%」 禁止遺伝子は特定されておらず検査・摘発はできない - イザ!

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スポーツ医学から見た東京五輪

究極肉体改造“遺伝子ドーピング” 運動能力は「遺伝70%、環境30%」 禁止遺伝子は特定されておらず検査・摘発はできない

誰もが薄々気がついているのに、口にしないことがあります。それは、運動能力は遺伝によるところが大きいということです。たとえば、体操の内村航平選手、卓球の張本智和選手や伊藤美誠選手などは、親御さんも同じ競技でトッププレーヤーでした。したがって、「生まれつき」と思うのは自然でしょう。ただ、これを100%肯定してしまうと、努力は無意味になってしまいます。持って生まれた運動能力がないと、トップ選手にはなれないと思われてしまうからです。

しかし、ゲノム解析が終わり、遺伝子研究が進んだいま、もはやこのことは疑いようのない事実です。一流選手は一流選手の親から生まれる、というのは伝説ではなく現実のひとつなのです。

一般的に、学力では「遺伝50%、環境50%」と思われていますが、運動能力では「遺伝70%、環境30%」といったところが、最近の研究が示すところです。運動能力は、ほかの能力よりも、遺伝によるところが大きいのです。

運動能力と遺伝子との関係が初めて論文で指摘されたのは、いまから20年以上前。以来、研究者たちは運動能力をつかさどる遺伝子を見つけ、その作用を調べることに熱中してきました。DNAの塩基配列には、同じ場所でも個人により異なる配列となっている部位があり、これを遺伝子多型と言います。

たとえば、持久力に適した遺伝子ということで、見つけられたのが「ACE遺伝子」(アンギオテンシン変換酵素遺伝子)です。この遺伝子には配列が違うものがあり、それにより持久力が異なるのです。

いずれにせよ、いまや遺伝子レベルで運動能力は判定され、トレーニングが行われようになってきました。また、遺伝子工学の進歩で肉体改造が可能になってきました。いわゆる「遺伝子ドーピング」です。

遺伝子ドーピングではステロイドのような薬物ではなく、たとえば筋力を向上するようなある特定の遺伝子をゲノム編集で細胞に入れます。そうして、その遺伝子の量を増やすことで、身体能力を向上させます。この技術は、すでに遺伝子治療に用いられています。

世界反ドーピング機関(WADA)は、すでに遺伝子ドーピングを禁じています。そして2018年には、遺伝子を改変できるゲノム編集を禁止事項に加えました。とはいえ、WADAは禁止遺伝子を特定していません。そのため、もし行われたとしても検査・摘発はできないとされます。また、従来の薬物ドーピングとは異なり、使用痕跡がほとんど残らないので、たとえ検査方法が確立されても特定するのは難しいのです。

ソチ冬季五輪でWADAは、ロシアが国ぐるみで組織的なドーピングを行なったと摘発し、リオ五輪ではロシアの国としての出場は認めず、違反者以外の選手の個人参加としました。

もはや、日本人が考えている五輪は五輪ではありません。いずれ、五輪は「遺伝子の祭典」になるかもしれません。トップアスリートの世界では、「努力」「根性」「がんばり」などは通用しなくなるとしたら、恐ろしい未来です。 

■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。

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