【ドクター和のニッポン臨終図巻】元プロ野球選手・大島康徳さん 余命ではなく天命を全う - イザ!

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ドクター和のニッポン臨終図巻

元プロ野球選手・大島康徳さん 余命ではなく天命を全う

大島康徳さん
大島康徳さん

 僕は「余命宣告」という言葉が大嫌いです。患者さんの生きる気力を奪ってしまうことがあるし、あくまで統計上の平均値を伝えるだけのことであって、よくハズレるからです。

 たとえば、末期がんで余命3カ月と病院で宣告された人が、在宅医療に切り替えてから半年以上生きたケースをたくさん見てきました。あるいは、余命3カ月と言われながらも、たった1週間で旅立ってしまう人も時々いるのです。

 命あるものは皆、いつか死ぬ。明日生きている保証のある人間なんて、この世に1人も存在しない。自分の余命さえわからないのに、他人様に余命をお知らせするなんて、医者だからといってもおこがましい気もするのです。だから患者さんに「先生、私はあとどれくらい生きられますか?」と訊かれても僕は口ごもってしまう。でもほんとうにあと数日だな…と感じた時は、ご家族には心の準備をしてもらうために、ご本人のいないところで丁寧にお話しします。

 しかし、余命を知ることでより強く、長く生きられる人もおられます。この人が、まさにそんな生き方でした。

 元プロ野球選手で日本ハムの監督も務め、野球評論家としても活躍されていた大島康徳さんが、6月30日に死去されました。享年70。死因は大腸がんとの発表です。大島さんは、2016年秋にステージ4の大腸がんと診断。肝臓にも転移がみつかり、余命1年と宣告されました。

 その闘病の様子を隠すことなくブログに書き続け、ファンはもちろん、同じ状況にいる方々と想いを共有しておられました。僕は、その大島さんのブログ〈この道〉をすべて拝読しました。

 進行がんとどう向き合うか? どんな医者が書いたものよりも心に迫る内容で、小林麻央さんのブログを通読したときと同じ気持ちになりました。

 大島さんが自力で最後にブログをアップしたのは6月28日。

 〈脚の筋肉は落ちたけど ふくらはぎの筋肉はまだ生きている 生きるとは歩くこと 人として生きるとは 自分の口から食べたり飲んだりすること 自分の足で歩いてトイレに行くこと ブログを書くことが きつくなってきました ママちゃん、頼むよ。俺がママちゃんに伝える言葉 ちゃんと皆に伝えてくれよ〉

 亡くなる2日前にこんな力強いメッセージを残された。そして亡くなられた後、奈保美夫人は同ブログで、〈天命を見事に全うするそのとても尊い瞬間を身をもって見せてくれた〉と書いています。

 余命ではなく、天命を生きた人。大島さんのブログは必読です。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

zakzak

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