【昭和歌謡の職人たち 伝説のヒットメーカー列伝】言葉ひとつで誘惑されてしまう恋愛歌の達人 作詞家・荒木とよひさ - イザ!

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昭和歌謡の職人たち 伝説のヒットメーカー列伝

言葉ひとつで誘惑されてしまう恋愛歌の達人 作詞家・荒木とよひさ

 『時の流れに身をまかせ』(1986年)の歌詞を恋人に多用されたという話は巷でよく聞かれた。この曲に『つぐない』(84年)『愛人』(85年)『別れの予感』(87年)のテレサ・テン一連の大ヒット作はすべて荒木とよひさ作詞、三木たかし作曲である。

 歌のタイトルも映画の看板と同じ重要な要素だ。言葉ひとつで誘惑されてしまう。どれも恋する女心が描かれ、文字通り詞・曲・歌がひとつになっている。テレサの歌声も甘く切なく濡れた声質で、シルクのボイスといわれ、鳥肌が立つという人も大勢いた。声質は大きな武器である。声質だけは天からの授かりものでどうにもならない。

 当時、バブリー全盛の頃でカラオケがあれば、必ず誰かが歌っていた。若い女性から円熟した女性まで誰もが恍惚(こうこつ)の表情で歌っていた。女性層にこれだけ愛された恋愛歌は過去にはなかったのではないか。

 さらにチョー・ヨンピル『想いで迷子』(86年)桂銀淑『すずめの涙』(87年)など韓国歌手の日本での大きなヒットも生んだ。当時韓国で次第に日本語の歌が開放されるようになったのも、これらのヒットが少なからず影響しているのではないだろうか。

 テレビの昼ドラからブレークした高山厳の『心凍らせて』(92年)は大人の男がカラオケで歌ったものだ。日本の男はロマンチックなラブソングに照れてしまう人が多かったが、この頃から次第にその気になって歌い始めるようになった。ヒット曲とカラオケのまさにマックスの時代である。

 荒木さんは43年生まれ、大連から熊本に引き揚げて、日本大学芸術学部を卒業している。学生時代にスキーのジャンプで大けがをして、入院中に作詞作曲した曲が芹洋子の『四季の歌』(72年)である。

 テレサ・テンでヒットを飛ばし、上昇気流真っただ中だったころ、あるパーティーで荒木さんが謙虚に「これからもさらに精進して、いい歌、感動する歌を作っていきたい」とあいさつされた。

 まさに乗りに乗った絶好調の時でも、ひたむきであり続ける姿勢に職人作家の姿を見た思いがした。2005年、紫綬褒章を受章された。 =おわり 

 ■荒木とよひさ(あらき・とよひさ) 1943年9月19日生まれ、77歳。72年、『四季の歌』でデビュー。

 ■篠木雅博(しのき・まさひろ) 株式会社「パイプライン」顧問、日本ゴスペル音楽協会顧問。50年生まれ。73年、渡辺プロダクションに入社し渡辺音楽出版を経て、東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)入社。制作ディレクターとして布施明、アン・ルイス、大塚博堂、五木ひろしらを手がけ、椎名林檎や石嶺聡子のデビューを仕掛けた。2010年に徳間ジャパンコミュニケーションズ代表取締役社長に就任し、リュ・シウォン、Perfumeなどブレークアーティストを輩出してきた。17年に退職し、現職。

zakzak

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