東京五輪・パラリンピックに向け、ボランティア活動やイベント開催などを通じて機運を高めてきた学生団体がある。2014年発足の「おりがみ」は当初の6人から約250人に拡大。大会ボランティアとして携わる予定のメンバーも多い。五輪はほぼ全会場で無観客となり、大会ボランティアの活動は〝縮小〟ムード。それでも、中心メンバーは前向きに意義を感じ取ろうとしている。
今月3日、千葉県内で行われた五輪聖火の点火セレモニー。「おりがみ」を立ち上げた千葉大大学院生の都築則彦さん(26)は、自身が持つトーチに炎がともった瞬間に「目指していたものはこれだったんだなと思った」と、感慨深げに振り返る。
東京大会招致が決まった翌年の2014年8月、当時千葉大1年だった都築さんがオリパラを機に学生生活を充実させようと考え、6人の仲間で団体を発足。五輪やスポーツに関わるイベント企画やボランティア活動を軸に続けてきた。現在は首都圏を中心に約30校の約250人の学生が参加するまでになった。
団体として大会の機運を高めようと活動し、メンバー約20人が大会ボランティアとしても個々に登録。大学院でボランティアを研究している都築さんも、パラの車いすテニスの試合会場で活動予定となっている。ただ新型コロナ禍で、大会ボランティアを取り巻く環境も大きく変化。辞退者が相次ぎ、大半の会場が無観客となって活動中止や縮小を余儀なくされた。大会ボランティアの〝機運〟も停滞気味だ。
「無観客開催があまりにも直前に決まり、何年もかけて準備をしてきた人たちが振り回されている」と都築さんは表情を曇らせる。それでも「参加する大会ボランティアは、一人でも多くSNSなどで発信してほしい。何を見たのかを知りたい」と呼び掛ける。
都築さんは今月、団体代表を退き後輩の杉本昴熙(たかき)さん(23)=東洋大3年=に引き継いだ。杉本さんは「オリパラは目的ではなく、これをきっかけに社会の課題を掘り起こすスタートにしたい」と強調。都築さんは「日本でボランティアはまだ余暇扱い。やってみたいと思える、面白いものなればと思う」。東京大会でともったボランティアの炎を、閉幕後もつなぎ続ける。(小山理絵)
▼「おりがみ」
「『おり』ンピック・パラリンピックを、『が』くせい『み』んなで盛り上げよう」の頭文字から命名。街の清掃活動を皮切りに、自治体による五輪関連イベントやパラスポーツ勉強会に参加するなど幅広い分野でイベント企画やボランティア活動を行う。2019年には東京・上野で半世紀ぶりの盆踊り大会を企画。18年に行われたオリパラの大会ボランティア募集に応募できなかった学生にも、何らかの形で大会に関わる場を提供することも主な活動目的の一つ。