しかし筆者は、「免許更新制」をやめれば、それで問題解決とは考えていません。むしろ抜本的な解決からは、ほど遠くなると考えます。教員の学ぶ機会が減ることになり、状況は悪化するかもしれません。免許更新制ばかりに気をとられていると、本質的な問題に向き合わなくなるのでないでしょうか。これで「改革した」と政治家の宣伝には使ってほしくありません。
教育研究家の妹尾昌俊氏の調査によると、1カ月に本(小説や漫画は除く)をほとんど読まない(0冊)という教員は小学校で約3割、中学校、高校では4割強といっています。丁寧に述べれば、熱心に本などから学び続けている教師も一部いる一方で、学びを止めてしまっている教員も相当数いるということです。
「教師の資質・能力の向上が必要だ」「学び続ける教師が求められている」こういうことはもう10年、20年、ずっと文科省、中教審、各教育委員会も言ってきました。ですが、これまでの対策(免許更新含め、他の研修なども)が果たしてどこまで有効だったのか、十分でないとすれば、それはなぜなのかという視点での検証、検討がまだ深くはないのです。
日本の大多数の教員の熱意、善意、やる気、能力を信頼している筆者としては、免許更新講習の際の教師たちの意欲的な学ぶ姿に敬意を持っています。付け焼き刃でなく、膏薬の重ね貼りでない、根本から教員の働く環境整備、待遇改善を願ってやみません。
◇
【今村裕(いまむら・ゆたか)】 昭和31年、福岡市生まれ。福岡県立城南高校、福岡大学、兵庫教育大学大学院修士課程、福岡大学大学院博士後期課程。公立小学校教諭、福岡市教育センター、同市子ども総合相談センター、広島国際大学大学院心理科学研究科、大分大学大学院教育学研究科(教職大学院)を経て、現在開善塾福岡教育相談研究所代表。純真短期大学特任教授。臨床心理士、公認心理師。