【スポーツ医学から見た東京五輪】「スポーツドクター」は何をするのか? 無報酬に“応募殺到”のワケ - イザ!

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スポーツ医学から見た東京五輪

「スポーツドクター」は何をするのか? 無報酬に“応募殺到”のワケ

東京五輪事前合宿のため早くから来日しているソフトボールのオーストラリア代表の選手ら
東京五輪事前合宿のため早くから来日しているソフトボールのオーストラリア代表の選手ら

 今回の「東京オリ・パラ」では、約6000人の医療従事者がアスリートを支えます。各競技場には必ず医師と看護師が配置されます。5月に組織委が追加で200人のスポーツドクターを募集したところ、なんと393人の応募があり、世論は激しく反発しました。 「コロナで医療がひっぱくするなか、どういうことだ」と。さらに無報酬ということで、「それならなおさらコロナ患者を助けたらどうか」というのです。確かにそのとおりですが、私は世間がスポーツドクターについてほとんど知らないことに戸惑いました。

 じつは、私もスポーツドクターの1人です。もう30年以上前になりますが、早大教育学部でスポーツ医学の講座を持ち、日本ボクシングコミッションドクター、新日本プロレスのリングドクターも務めました。選手の健康管理をサポートし、たとえば、CPK(クレアチンキナーゼ)の数値などには常に気を配ったものです。

 CPKというのは、骨格筋や心筋、平滑筋などの筋肉や脳に多量に存在する酵素で、筋肉細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たします。そのため、CPKの数値が大きく上昇している場合、過度な運動による筋肉のダメージや損傷を疑います。私が感心したのは、アントニオ猪木氏のCPKが常に一定だったことです。

 もちろん、選手がけがや故障をした場合、治療やリハビリの指導を行います。メンタル面でのアドバイスも行います。スポーツドクターは、スポーツ医学に特化した知識と研究、実務経験がないと務まりません。

 日本でスポーツドクターの重要性が認識されたのは、最近です。1982年に、日本体育協会(現、日本スポーツ協会)が、公認スポーツドクター制度を創設したのが始まりです。以後、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本医師会認定健康スポーツ医の2つが加わり、認定資格となりました。公認スポーツドクターは4年に1回、認定講習を受ける義務があります。私も数度更新しました。現在、日本には認定スポーツドクターが6000人余りいます。

 ひと口にスポーツドクターと言っても、ピンキリです。プロスポーツの世界、たとえば野球、サッカーなどでは、チームと専属契約を結んでいる医師は花形です。スポーツ専門医として医療チームのリーダーを務めれば、勤務医に比べたら、はるかに高い収入が得られます。日本では数千万円クラスですが、アメリカでは億を稼ぐドクターがいます。

 このような背景があるため、認定資格を持つ医師はメジャーな大会があれば、無償であろうと応募するのです。そうして箔をつけるわけです。なにしろ、シフトに恵まれれば、花形種目の「100メートル決勝」「マラソン」などの現場に立ち会えます。つまり、メジャーな大会のスポーツドクターは「買い手市場」で、組織委はこれをわかって募集をかけたのです。ちなみに、ロンドンでもリオデジャネイロでも一部を除いて医師は無報酬でした。

 五輪は世界最大のスポーツイベントですから、各国の選手団はその規模に合わせた医療チームを帯同させます。チームジャパンの場合、今回は地元ですから最大規模で、その中核は、国立スポーツ科学センター(JISS)の勤務医です。

 選手団帯同の医療チームとは別に、選手村にはクリニックが設置され、内科、外科、整形外科、皮膚科、眼科、歯科、耳鼻科などの医師が勤務します。レントゲン、CTなどの最新設備も用意され、24時間態勢でアスリート、関係者をサポートします。

 今回はコロナ対策もあるので、医療従事者の犠牲的な支えなしでは成り立たない五輪になりました。

 ■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。「不要なクスリ 無用な手術」(講談社)ほか著書計67冊。

zakzak

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