世代交代が進む国内女子ゴルフの選手サイクルは短い。いつの間にかツアーからいなくなった選手も多い。百花繚乱(りょうらん)の女子ツアーは、まさに「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」の厳しい世界である。
8日から11日まで北海道・桂GCで行われた「ニッポンハムレディス」で、堀琴音が待望のツアー初優勝を果たした。プロデビューから165試合目でつかんだ優勝だった。2014年のプロテストに3位で一発合格。「うれしい。でも、半分半分かな。トップ合格を目指していたので。ギャラリーさんに愛されるプロになりたい」と自信に満ちた笑顔で話した日から7年。この3年はどん底を味わい、表舞台から消えた一人になっていた。
18年は賞金ランキング114位、19年には150位にまで落ちた。入れ替わるように、1998年度生まれの黄金世代が台頭してきた。河本結、原英莉花、小祝さくららが次々と初優勝した19年は10試合で予選通過は1試合だけ。主戦場となった下部のステップアップツアーも13試合に出て、予選通過は6試合しかなかった。
「どうしてあんなに簡単に勝てるのかな、と思っていた。優勝するって難しいのに…」
優勝会見で当時を振り返ったときの言葉には実感がこもっていた。シードを喪失した18年はプロ5年目。黄金世代とは3学年しか違わないが、若年化が顕著なツアーの中では、もはや若手ではなくなっていた。ついこの間まで自分の立ち位置だった場所には、まぶしい後輩プロたちがいた。
2年目の16年に初シード、17年には賞金ランキング11位。大輪の花を咲かせることを誰もが信じて疑わなかった。「野菜が嫌い。ピーマンは見るのもダメ」とケラケラと笑っていたのも、その頃だった。「シードを落としたときは絶望しかなかった。この世の終わりだと思った」。よくぞはい上がってきたと思う。
「ニッポンハムレディス」の開催週の6日はツアー2勝の姉・奈津佳の29歳の誕生日だった。残念ながら姉は予選落ちしたが、「桂GCは姉のプロデビュー戦(ニトリレディス)の会場。高1だった自分は姉の応援に来ていた。縁を感じる」という妹が優勝した。
姉妹が東京に出るまでは、自分と同じ神戸市民。ご近所さんだっただけに、なおさらうれしい。「やめようと思ったこともあるけど、結局練習している自分がいた。このまま終わりたくなかった」。毎日の水やり(練習)を続ける限り、「花の命は結構長い」のだ。(臼杵孝志)