宣言地域で授業に遅れ、大阪は夏休み短縮も

産経ニュース
登校する大阪市立中学校の生徒=15日午前8時13分、大阪市(沢野貴信撮影)
登校する大阪市立中学校の生徒=15日午前8時13分、大阪市(沢野貴信撮影)

夏休みが近づく中、4月下旬から新型コロナウイルスによる3回目の緊急事態宣言の対象となった大阪などの小中学校が、学習の遅れを取り戻すための対応に追われている。大阪市立小中学校では約1カ月にわたって「原則オンライン学習」となった影響で、夏休みの短縮を決めた学校も。対面授業を継続した地域でも、感染防止のために学校を休む子供たちがおり、コロナ禍の影響が続いている。

大阪市教委は4月25日からの宣言期間中、オンラインやプリントによる自宅学習を行うよう各校に要請。通常の対面授業に戻したのは5月24日で、この間の授業の遅れについては、土曜授業や7時間授業の実施などで対応するよう求めた。

ある市立中学では、実施できなかった授業が約60時間に及び、7時間授業や期末テストの日数を短縮するなどして挽回を図る。一方、別の市立中学では4月末から対面授業を再開させており、授業に遅れは生じていない。オンライン学習を試みたものの「動画が見られない」という声が相次いだためだが、校長は「(他校から)『正直者が損をした』といわれても仕方ない」と話す。

全市立小中学校の各学年を対象とした市教委の調査によると、家庭と教室をつなぐ双方向のオンライン学習を実施したのは、中学校は44~50%。小学校は6年の54%が最高で、低学年ほど割合が低かった。

大阪市天王寺区の市立小学校はこの期間中、プリント学習が大半だったといい、小学4年の長女を通わせる母親(36)は「オンラインで双方向授業をしていた学校もあると聞き、学習の差が開くことが不安になった」と焦りをにじませる。市教委によると、失われた授業時間を確保するため夏休みを短縮する学校が複数あるという。

大阪市以外の自治体は対面授業を続けたが、緊急事態宣言の影響がなかったわけではない。

神戸市では、感染への不安から登校しない市立小中学校などの児童生徒が5月10日時点で500人に上った。高齢の祖父母と同居していたり、保護者が医療関係者のため感染リスクを避ける必要があったりなどの事情とみられる。市教委の担当者は「希望者には授業のライブ配信を行っている」。児童生徒はタブレット端末で問題を解いたり、放課後に個別面談を受けたりして学習が遅れないようサポートを受けているが、今月5日時点で111人が登校できていないという。

「教育格差」コロナで拡大も

新型コロナウイルス禍による子供の学力低下が懸念されている。すでに昨年度の自治体などの調査で、算数での低下傾向が確認されているが、感染拡大による登校の自粛などによる影響は現在も続く。専門家は「従来からの教育格差がコロナ禍で拡大している可能性がある」と指摘している。

昨年度の長期休校は、都市部を中心に最長約3カ月に及んだ。多くの学校は夏休みの短縮などで対応したものの、学校現場からは学力の定着に対する不安の声もある。学研エデュケーショナル(東京)が昨秋に全国の児童11万人に行った調査では、小学5年の算数の正答率が低い傾向にあることが判明した。担当者は「図形など一人で学ぶのが難しい単元に影響したのでは」とみる。埼玉県の昨夏の調査でも、小学4、5年の算数で、前年度より点数が低かった。

コロナ禍の影響について、教育格差に関する著書のある早稲田大の松岡亮二准教授は「負の影響の有無や大きさは家庭によって異なるが、もともとあった家庭の社会的経済的地位による格差が拡大している可能性がある」と指摘する。

保護者の学歴や経済力が高い家庭は子供の学力が高く、オンライン学習のためのICT(情報通信技術)環境も整える傾向にある。一方で、子供が静かに勉強できる部屋や学習机すら自宅にない家庭もある。

「学校で同じ扱いをするだけでは学力などの差は埋まらず、将来の子供の進路選択にまで影響を及ぼす可能性がある」と松岡准教授。「行政は学習の継続が困難な家庭や学校を把握し、教員やICT支援員などを追加配分することで、学力向上などの結果を出せる体制を整えるべきだ」と訴えた。(地主明世、藤井沙織)

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