いきもの語り

商店街を散歩するケヅメリクガメ 東京・月島

産経ニュース
三谷久夫さんと散歩するケヅメリグガメのボンちゃん=中央区月島
三谷久夫さんと散歩するケヅメリグガメのボンちゃん=中央区月島

梅雨の晴れ間、大きな甲羅を陽光に輝かせて、商店街をゆっくりと進む。立派な脚で地面を踏みしめ、一歩、また一歩…。

もんじゃ焼きの店が軒を連ねる東京都中央区月島の西仲通り商店街。体長1メートル、体重100キロを超えるケヅメリクガメが散歩している。

「ボンちゃんだ!」

通りかかった地元の子供たちが駆け寄る。中には、その背に乗せてもらう子も。観光客はスマートフォンのカメラを向ける。「触っても大丈夫ですか?」

「もちろん。ボンは病気をしたことがないのが自慢だから、パワーをもらえるよ。縁起がいい」

飼い主の三谷久夫さん(68)がほほえみながら、うなずいた。「ボンはこの夏で25歳。昔、乗っけてあげた子供はもう大人になっちゃったなあ」

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三谷さんは月島で創業80年以上になる老舗の葬儀社の代表を務める。ボンちゃんは爬虫(はちゅう)類好きの妻が都内のペットショップで「目が合った」と言って、買って帰った雄のカメ。平成8年夏のことだ。当時は、手のひらに乗せられるほどの大きさだった。「お盆の時期にうちに来たから、名前が『ボン』」。

当初は金魚鉢で飼っていた。しかし、10歳を過ぎたころからは急速に成長し、バスタブで飼うようになった。いまでは、店舗の玄関に備え付けられた幅、奥行きとも数メートルもある特注の小屋で過ごす。保温機器で常に25度前後の暖かさに保つ。食事は1日1回。バナナ1本、リンゴ1個、キャベツの葉っぱを5、6枚と、思ったよりも小食だ。

ケヅメリクガメはアフリカが原産。ケヅメは「蹴爪」と書く。ニワトリなどの足には攻撃や防御に使う突起がみられるが、このカメの脚にもそれに似た突起があることに由来する。

寿命は環境によって異なるが、50年とも、100年を超えるともいわれる。三谷さんは「何にせよ、俺より長生きするよ」と笑う。

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仕事柄、三谷さんには休みがない。晴れた日の夕刻、仕事の合間に、歩行者天国となった商店街の往復約400メートルを連れて歩く。30分ほどの道のりで、折り返し地点の十字路まで来ると、ボンちゃんは自らUターンする。不満なら、戻るのを嫌がって、さらに歩こうと〝催促〟するそうだ。

6月中旬。この日は甲羅に、アジサイの造花を飾って出かけた。その飾りは、季節に応じて取り換える。正月、ひな祭り、母の日、ハロウィーン、クリスマス…。「もうすぐ父の日だから、今週末からは、これを背負ってもらおうと思うんだ」と、三谷さん手製の「お父さん、ありがとう」というステッカーを見せてくれた。

「きょうも元気だね」「また、大きくなったんじゃない?」。すれ違う地元の住民たちが声をかける。いまや、月島のマスコットキャラクターといっても過言ではない。

三谷さんは話す。

「葬儀社に、おめでたいカメなんて、とも思う。でも、うちに来るのは大切な人を亡くした人たち。ボンの姿を見て、その悲しみを少しでもいやせたらと思う」

(玉崎栄次)

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