【歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡】ツッパリ系最後の作品 「十戒」に「イライラするわー」 - イザ!

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歌姫伝説 中森明菜の軌跡と奇跡

ツッパリ系最後の作品 「十戒」に「イライラするわー」

 デビュー3年目を迎えた中森明菜は、与えられた作品を単に「演じる」のではなく、自らが「時代の空気を体現し始めた」と関係者はいう。

 「楽曲も徐々に多様性に満ちたアーティスティックな作品を求めるようになっていた」

 所属レコード会社のワーナー・パイオニア(現ワーナーミュージック・ジャパン)の邦楽宣伝課で明菜の担当プロモーターだった田中良明(現在は「沢里裕二」として作家活動中)は、当時の明菜を鮮明に記憶する。

 「僕たち旧世代的アイドル感覚の捨てきれないスタッフと明菜の間に溝が生まれ始めた時期でしたからね。とにかく作品からファッションセンスに至るまでどんどん乖離(かいり)していくのです。特に『十戒(1984)』では、かつての“ツッパリ3部作”(『少女A』『1/2の神話』『禁区』)の売野(雅勇)さんに戻ったのですが、明菜自身は多分『もうこういった企画じゃないんじゃないの』って思っていたように感じますね」

 『十戒(1984)』は売野と当時、ギタリストとして人気の高かった高中正義が組んだ異色の作品。プロデュースは明菜をデビュー当時から担当してきたワーナーの島田雄三。売野が島田と打ち合わせて進め、明菜の意見はまったく聞くことがなかったという。

 そういえば『北ウイング』もそうだった。作詞の康珍化と作曲の林哲司は明菜の指名だったが、林には「杉山清貴とオメガトライブの『SUMMER SUSPICION』のような曲を作ってほしい」との伝言のみで、明菜との打ち合わせはまったくなかった。

 林はアレンジも担当したが「レコーディングも立ち合わせてもらえなかった」と当時を振り返っていた。そのため、当初の「仕上がりが不安だった」というが、最終的にできあがってきた作品を聞いて「完璧なものに仕上がっていました」と明菜の才能を評していた。

 一方、『十戒』については、売野も『コンプリート・シングル・コレクションズ~ファースト・テン・イヤーズ』(ワーナー)のライナー・ノーツで「ぼくの創り上げた詞の主人公を見事に演じ、脚本以上の映像をつくってしまう素晴らしきシンガーアクトレス」と評する。

 もっとも田中は「本質的に明菜は完璧主義者でしたからね。おそらく島田さんの指示というより、とにかく自分が納得するまで歌い切っていた。それが明菜でしたから。論理的に語るわけではありませんが、妥協はなかった。ですが、僕が思うに、やはり『十戒』には詞のセリフではありませんが『イライラするわー』だったんじゃないでしょうか」とも。

 その『十戒』について、評論家の中川右介も著書『松田聖子と中森明菜(増補版)一九八〇年代の革命』(朝日文庫)の中で《北ウイングから霧の国に行ったはずが、どこか南の国で白いヨットの美少年に手を振っている中森明菜に、ファンは戸惑っているのではないかとの判断が、どこかで下された。ツッパリ系に戻り》と前置きした上で、次のように記す。

 《結果的にツッパリ系最後の作品になるので、その集大成と言うべき、ツッパリ用語のオンパレードとなっている。閉店間際の叩き売りみたいだ。「発破かけたげる」はともかく「さあカタをつけてよ」「坊やイライラするわ」と、山口百恵の曲から恥ずかしくもなく引用している。中森明菜には責任はない。引用であろうが、二番煎じであろうが、こういう分かりやすさは、支持されやすい。《十戒(1984)》は六十万枚で《サザン・ウインド》の五十四万枚よりは売れた。だが、いちばん「イライラして」この路線に「カタをつけ」たがっていたのは、中森明菜だっただろう》

 田中はいう。

 「メディアは圧倒的に売野の生み出した“明菜像“を好みました。どうしても“突っ張った中森明菜”を演出したかったのでしょう。しかし、明菜自身は、その路線が、自分そのものの人格と誤解されるのを快く思っていなかったと思います」 =敬称略 (芸能ジャーナリスト・渡邉裕二)

 ■中森明菜(なかもり・あきな) 1965年7月13日生まれ、55歳。東京都出身。81年、日本テレビ系のオーディション番組『スター誕生!』で合格し、82年5月1日、シングル『スローモーション』でデビュー。『少女A』『禁区』『北ウイング』『飾りじゃないのよ涙は』『DESIRE-情熱-』などヒット曲多数。NHK紅白歌合戦には8回出場。85、86年には2年連続で日本レコード大賞を受賞している。

zakzak


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