【モスクワ=小野田雄一】ロシアのラブロフ外相は8日、日本との平和条約締結交渉について「次回協議は現時点で予定されていない」と明らかにした。ラブロフ氏は両国の立場には隔たりがあるほか、日本が日米同盟に関するロシアの懸念に回答していないとも指摘。平和条約交渉の停滞感が改めて浮き彫りとなった。
極東ウラジオストクで行われた講演の発言をイタル・タス通信が伝えた。日露間の本格的な平和条約交渉は1年以上行われておらず、次回の首脳会談や閣僚級協議がいつ行われるかも見通せない状況だ。
ラブロフ氏は、日本側が「領土問題の解決後に平和条約を結ぶ」ことを要求しているが、プーチン露大統領と安倍晋三前首相は「包括的な平和条約」を結ぶことで合意したものの、「領土問題の解決後」とは合意していないと述べた。
また、ロシア側は日米同盟がロシアの脅威にならない保証を求めているが、日本側は返答を避け、むしろ日米同盟を強化していると指摘。ロシアによる北方四島での経済開発や軍事演習に対する日本の抗議は不当だとも主張した。
日露平和条約をめぐっては、安倍前首相とプーチン氏が2018年11月、「平和条約締結後にソ連は歯舞群島と色丹島を日本に引き渡す」と定めた1956年の日ソ共同宣言に基づいて交渉を加速させることで合意。その後、ロシアは領土問題を棚上げした善隣友好条約型の平和条約を結ぶべきだとする立場を強め、昨年の憲法改正で「領土割譲の禁止」の条項を新設するなど、交渉に後ろ向きともいえる姿勢を示している。