【異才・森田芳光が描き続けたもの】音楽を排除、食事の場面でも効果音だけ 「家族ゲーム」(1983年) - イザ!

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異才・森田芳光が描き続けたもの

音楽を排除、食事の場面でも効果音だけ 「家族ゲーム」(1983年)

 原作は1981年にすばる文学賞を受賞した本間洋平の小説。どこにでもあるような問題だらけの家族のドタバタをコミカルに、あるいはシュールに描いている。

 劇中、横に長い食卓で家族が並んで食事をするという異様で印象的なシーンがある。普通なら向かい合って座るものだが、それが横一列。まるでレオナルド・ダビンチの「最後の晩餐」を連想させるが、これは家族と食事について考えさせようという監督の計算。

 おそらく家庭教師の吉本(松田優作)を降臨したキリストに見立てているのだろう。これに似た場面が『赤ひげ』にも出てくるから黒澤明へのオマージュ。黒澤を尊敬する森田は『椿三十郎』のリメークをオリジナル台本で撮ったほどだ。

 冒頭、伊丹十三の書いたエッセー集『女たちよ!』の中の1編「目玉焼きの正しい食べ方」をパロディーにしたシーンが出てくる。半熟の目玉焼きの黄身をチューチュー吸うのは母乳を吸う幼児帰りを意味しているのかも。母親役の由紀さおりが夫と目玉焼き談義しているのはいかにも昭和の主婦の典型。

 本作の特徴は音楽を排除したこと。食事の場面でも効果音しか使われていない。咀嚼(そしゃく)音が不気味すぎるという意見もあった。

 ハードボイルドなイメージの松田にとっては怪演といえる役だった。小津安二郎は俳優にわざと棒読みをするように演技指導したといわれるが、本作もぶっきらぼうな松田といい、間合いの微妙な宮川一朗太といい、目線アングルの長回し。小津を意識した演出をしている。

 『キネマ旬報』ベスト・テンでは日本映画部門で1位に輝いた。さらに日本アカデミー賞での7冠(作品賞、監督賞、主演男優賞など)を含め、多くの賞を総なめにしている。

 この『家族ゲーム』はよほど人気があったとみえて、映画化に先駆けて82年にテレビ朝日系で鹿賀丈史主演の2時間ドラマとして作られている。映画版と違うのは兄弟ではなく姉弟。またラストで吉本はインドに渡る設定になっている。

 TBSでは83年に長渕剛を主演に連続テレビドラマ化し、ヒット。高視聴率に気をよくして翌年にスピンオフとして『家族ゲームII』も。さらに2013年にはフジテレビが櫻井翔主演で製作している。どうやらこれからも作られそうな気配だ。(望月苑巳)

 ■森田芳光(もりた・よしみつ) 1950年1月25日生まれ、神奈川県出身。日本大学芸術学部に進学し、自主映画製作を開始する。81年、『の・ようなもの』でデビュー。代表作は『家族ゲーム』『メイン・テーマ』『それから』など。2011年12月20日、C型肝炎による急性肝不全のため61歳で死去した。

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