大赤字で“株価暴落中”の出前館、これは「良い赤字」か「悪い赤字」か

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■出前館の赤字は「良い赤字」?

コメ農家の例から考える、良い赤字の条件の1つ目が「回収見込みがあるか」だが、これは損益の内容を確認すればつかめる。仮に、この赤字の大きな部分が新規獲得に向けた広告費などで占められていれば、一定数の顧客を獲得した上で一時的な費用の蛇口を閉じれば黒字化するのが、一般的な成長サービスの相場となる。

この点について、出前館の直近四半期における売上原価及び販管費は125億4800万円で、そのうち広告宣伝費は35億0700万円だった。一方で売上高は80億2900万円となっていることから、現状では広告費をゼロにしたとしても依然として赤字になる計算だ。

赤字の深掘りについてはUberやmenuといった競合サービスとの競争力を高めるためのエリア拡大施策や配達員の囲い込みにかかる投資分がかさんだことが原因として挙げられている。また割合は明らかではないが、販管費や人件費の部分でも一時的な費用が紛れ込んでいると見られる。

そうすると、今の状況では回収見込みの点で懸念は残るが、今囲い込んだ配達員と販路で、22年8月期の決算における売上高の増加と営業赤字の縮小が見込めれば、23年から24年8月期あたりには黒字化する可能性もある。

22年8月期の決算予想を、一部では今期見込みの2倍程度である600億円規模、売上高に対する営業赤字の率も今期見込みの50%台から10%台に縮小すると置いている機関もある。出前館の費用に占める広告費の割合は足元でおよそ28%程度で推移していることから、決算期が変わる8月以降の推移に注目したい。

ここまで考えると、まだ悪い赤字の不安が残るのではないかという懸念もあるが、良い赤字の2つ目の条件「収穫時期まで手持ち資金が枯渇しないか」を見れば破綻の懸念はとても小さいことが分かる。

■キャッシュフロー

「収穫時期まで手持ち資金が枯渇しないか」という条件をコメ農家的にいえば、赤字がかさみすぎて肥料やトラクターの燃料が買えなくなってしまうというイメージだ。いくら収穫が見込まれているとはいえ、収穫前に経営が破綻してしまえば、結果としてその費用は回収見込みがなくなってしまい「悪い赤字」となる。

出前館の決算では、「キャッシュフロー」から手持ち資金の状況を確認できる。出前館の営業キャッシュフローは、14億9800万円の赤字だ。営業キャッシュフローとは、広告宣伝費や人件費といった本業から生じる現金の増減を表している項目だ。

出前館の営業キャッシュフローにおけるマイナス要因を確認すると、アルバイト配達員などの人件費が前年比で2.2倍となっているほか、広告宣伝費が前年比で3.3倍となっている。そして、出前館の新規エリア展開やシステム開発といった投資キャッシュフローも4億4900万円の赤字となっている。ここまでで、同社資産のうちおよそ20億円のキャッシュが減少していることになる。

しかし、財務キャッシュフローは287億円と大幅な黒字を記録している。これは仮に営業・投資キャッシュフローが今後も同じ水準で推移したとしても、少なくとも10年は耐えられるほどのキャッシュが出前館に入っているということだ。

その理由は、20年3月に発表されたLINEグループとの資本業務提携にある。出前館は、LINEと、韓国ネイバーが共同で設立するファンドが150億円ずつ出資することで、実質的にはLINEグループの子会社となり、現在はLINEと経営統合したZホールディングス傘下となっている。手持ち資金としては潤沢であることから、この点から破綻の可能性は低そうだ。

そうすると、目先は株価が下がっているものの、それは経営の失敗というよりも成長に向けた投資という意図がうかがえもので、市場の反応と経営陣のビジョンに若干のかい離がある状況であるといえるのではないか。したがって、短期的には出前館の株価自体はネガティブなトレンドが継続する可能性こそあるが、水面下の利用度は今後も増加の傾向をたどっていくのではないだろうか。

筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

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