ゴルフの東京五輪日本代表が内定した。世界ランキングに基づく五輪ランキングの上位2人の選考基準で選ばれたのは、男子が松山英樹と星野陸也、女子は畑岡奈紗と稲見萌寧。前回の2016年リオデジャネイロ五輪からは、ジカ熱と治安の不安から代表を辞退した松山を除けば、大きく顔ぶれは変わった。
ゴルフが112年ぶりに復活したリオに出場したときに43位だった大山志保の最新世界ランキングは227位。5月に44歳になったベテランは故障も多く、年齢的にもそろそろ限界と思う人もいるだろう。だが、ちょっと待ったである。
2008年賞金女王の古閑美保がこんなことを言っていた。「不動さんは神様みたいな人で別格。大山さんは宇宙人ですよ。こんな人いないでしょう」。同じ故清本登子プロに師事した後輩の言葉は言い得て妙だ。
03年「ベルーナレディース」でのツアー初優勝から18年「ヨネックスレディス」まで通算18勝。06年には賞金女王となった大山は毎年のように故障を抱えながらも、そのたびに復活してきた。両ひじを痛めていた08年には「マスターズGCレディース」を制したが、歓喜の胴上げから誤って転落。左ひじなどを強打したことも原因となって、米ツアーに挑戦した09年はどん底を味わった。
9月の「日本女子プロ選手権」出場のため一時帰国した飛行機の中。「左腕がまったく曲がらなくなっていた。機内でずっと泣いていた。あの頃が一番辛かった」。12月に内視鏡手術を受け、翌年9月にツアー復帰。11年10月に因縁の「マスターズGCレディース」で優勝したときには「人生の中で一番幸せ。泣くなんてもったいない。今までずっと泣いてばかりだったから」と最高の笑顔が輝いた。
今年も苦闘が続いている。昨年12月に左首痛、年明けの1月に痛みは左鎖骨周辺に広がり、「胸郭出口症候群」と診断された。練習を再開した3月には右足首を捻挫。完治しないまま6月の「リゾートトラストレディス」で今年初戦を迎えたときは「我慢してしまうのが自分の悪い癖。無理してやってしまう」と話していたが、そういう性分なのだから仕方ない。
「頑張りすぎたり、調子に乗ったら叱ってください」と頼まれたこともあったが、多分聞く耳は持たないだろう。そういう大山をずっと応援したいと思う。自分の年齢の半分以下の若手と回ることも珍しくなくなった。ただ、ゴルフに懸ける熱い思いは誰にも負けないものがある。「大好きなゴルフをまだまだやりたい。目標もあるんです」。その思いが体を突き動かす。3年後のパリ五輪だって狙ってほしい。まだまだ大丈夫。なんてったって宇宙人なんだから。(臼杵孝志)