【米中激突】デジタルを抑えたものが制す…コロナ禍後はデジタル国家競争の時代 - イザ!

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米中激突

デジタルを抑えたものが制す…コロナ禍後はデジタル国家競争の時代

 米国中心の民主主義国家が退潮するなか、中国発の新型コロナウイルスが世界中を襲った。ドナルド・トランプ前米大統領は、コロナ対策に失敗し、米国の死者数は15日、60万人を突破した(米ジョンズ・ホプキンズ大学集計)。第二次世界大戦の死者数(約40万5000人)を大きく上回った。

 ジョー・バイデン米大統領は就任早々の今年1月、「いまは戦時下にある」として、1950年の朝鮮戦争下で成立した「国防生産法」を発動し、ワクチンの供給拡大を急務とした大統領令を矢継ぎ早に出した。結果、ワクチン接種は急速に進んだ。5月28日時点で、国民の半分以上が接種を終えて沈静化へ向かっている。

 一方、新型コロナを早期に押さえ込んだ中国は昨年、コロナ対策に懸命な欧米を尻目に、千載一遇の好機とばかり、途上国への「マスク外交」を展開した。今年からは「ワクチン外交」を進め、次期覇権国家としての存在感を出してきた。

 ところが、ここに来て中国のワクチン生産能力に陰りが出てきたのか、多くの国々で中国製ワクチンの配送の遅れや不足が指摘されている。

 この状況を見透かしたように、先進7カ国(G7)は、英国での首脳会議の共同声明で、途上国を中心にワクチン10億回分を今後1年間で供与する方針を表明した。

 特に、米国では国内接種が進み、余剰分の輸出に乗り出す。米国は国産ワクチンだけでなく、英アストラゼネカ製のワクチンも確保しており、途上国にとっては、有効性に疑問がある中国製ワクチンより好まれることは確実である。

 新型コロナとの戦いは、国家として「デジタル・トランスフォーメーション(DX=デジタルによる変革)」を実現させるスピード戦である。

 中国が昨年、新型コロナから早期に回復し、GDP(国内総生産)を前年比プラス2・3%とできたのは、「デジタル統治」の成果だった。人の移動を制限し、情報統制可能な権威主義国家ならではである。

 中国は「デジタル経済」がGDPの約40%を占める。音声認識の発信型AIロボットが、「名前」や「家族構成」「体温」「せきなど症状」「感染者との接触」といった問診をし、感染状況を把握してロックダウンなどを徹底させた。

 これに対し、米国などの自由主義国家は長期間のロックダウンに反発する市民が暴徒化するなど、国内統制がとれずに長期化した。

 もともと、米国はデジタル化で世界をリードしていた。2020年には、世界全体のDX支出の3分の1を占めていた。中心は言うまでもなく、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)だが、独占禁止法に引っかかりそうで、デジタル化を鈍化させた。

 コロナ禍の世界は、「権威主義デジタル国家(中国)vs民主自由主義デジタル国家(米国)」という様相が強い。新型コロナは、今後の世界を大きく転換させようとしている。コロナ後に見えてきた世界は、「デジタルを抑えたものが国家を制す」というデジタル国家時代の幕開けとなった。

 ■川上高司(かわかみ・たかし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1955年、熊本県生まれ。大阪大学博士(国際公共政策)。フレッチャースクール外交政策研究所研究員、中曽根世界平和研究所研究員、防衛庁防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授などを経て現職。著書・共著に『トランプ後の世界秩序』(東洋経済新報社)、『2021年パワーポリテイクスの時代-日本の外交・安全保障をどう動かすか』(創成社)など。

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