【マンガ探偵局がゆく】「劇画」のことがわかる本 辰巳ヨシヒロの自伝『劇画暮らし』 - イザ!

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「劇画」のことがわかる本 辰巳ヨシヒロの自伝『劇画暮らし』

本の雑誌社『劇画暮らし』表紙
本の雑誌社『劇画暮らし』表紙

 これは、昨春にいただいていた依頼。もっと早くお答えすればよかったかもしれない。

 「マンガ家志望の高校生です。先日、地元の大学からゲストの先生を迎えた特別授業で、『劇画』というものの存在を初めて知りました。先生の説明だけではマンガとどこが違うのかはよくわかりませんでしたが、私より少し年長のお兄さんたちが、それまでのマンガを変えてしまった、というお話に感激しました。もう少し詳しいことを知りたくなって父に聞いたら、Webのこのコラムを教えてくれました。良い本があったら教えてください」 (マリリン)

 マリリンと名乗るからには女学生…もしかするともう大学生かもしれない。『劇画』という言葉を知らなかった、と聞いて探偵長はいささかショックだったが、「劇画ブーム」と言われたのは、もう半世紀も昔のこと。無理もないのだ。

 さて、劇画のことを知りたいのであれば、「劇画」という言葉をつくったことで知られる辰巳ヨシヒロの自伝『劇画暮らし』(本の雑誌社)がいいだろう。1935年に大阪で生まれた辰巳は51年に単行本『愉快な漂流記』(鶴書房)でデビュー。大阪の貸本専門出版社だった八興・日の丸文庫で同世代のさいとう・たかをらと短編集『影』創刊に関わる。仲間たちとマンガ表現の変革を模索し、57年12月、この新しいマンガを「劇画」と名付けたが、その後の安易な「劇画ブーム」に背を向けるように第一線を退いた。

 しかし、21世紀になり、辰巳は自伝的長編マンガ『劇画漂流』(青林工藝舎)などで再評価を受ける。2009年には同作で第13回手塚治虫文化賞を受賞した。

 翌年、文章の形で再び半生を振り返ったのが『劇画暮らし』だ。おもしろく一気に読めるのが『劇画漂流』、考えさせられるのが『劇画暮らし』といったところか。また、『劇画漂流』は、10年にシンガポールの映画監督エリック・クーの手で『TATSUMI マンガに革命を起こした男』として映像化された。カンヌ映画祭に正式出品するなどした。こちらはDVDがKADOKAWAから発売された。

 依頼人が言うとおり「劇画」という言葉は死語かもしれない。だが、その精神はコミックと呼ばれる現代マンガの中にも息づいている。紹介した以外にも「劇画」に関する本はたくさんあるので、この機会にご自分でも図書館などで探してみてほしい。

 ■中野晴行(なかの・はるゆき) 1954年生まれ。フリーライター。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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