やはり「電話」はいらないのか 不要論の背後に、皆が気付かない「力学」 - イザ!

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やはり「電話」はいらないのか 不要論の背後に、皆が気付かない「力学」

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「会社の電話を不要と感じることがある」人は62.8%(出典:うるる)
「会社の電話を不要と感じることがある」人は62.8%(出典:うるる)

「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏が、電話について「若い人が嫌がるのは当然だと思う」と発言したことが話題になっている。電話不要論は5年くらい前からネットで繰り返し議論されてきたが、いまだに盛り上がりを見せている。

電話に関していつまでも意見が食い違うのは、背景にある「力学」について多くの人が認識していないからである。電話の是非に関する議論は、基本的に立場が「強い」「弱い」、つまり権力を持っているかどうかに関係しており、最終的には格差問題につながっていく。

5年前から何度も議論されてきたテーマ

事の発端はひろゆき氏が「立場が強くて無能な人ほど電話を使いたがる。若い人が嫌うのは当然だと思う」と発言したことである。ネット上では、賛同する意見が出る一方で、何でも効率を優先すればよいというものではない、といった反対意見も多く見られた。

電話不要論は、5年くらい前からネット上で盛んに議論されてきたテーマである。本コラムでも取り上げたことがあるので、ネットをよく閲覧する人にとっては見飽きたテーマかもしれない(参照記事)。だが、ひろゆき氏は、最近、テレビという究極のマス媒体に活動の場を移しており、ネットの情報とは無縁だった人も同氏の意見を耳にするようになってきた(ネットの言論は今でも世間一般からすれば特殊な空間である)。

ネットではすでに飽きたと思われているテーマがこれほど話題になっているということは、全体からすれば電話論はまだまだホットなテーマなのだろう。

多くの人が欠落している視点

世の中では電話不要論に対して今でも賛否両論があるわけだが、多くの人に欠落している視点がある。それはコミュニケーションを取る相手との力関係(権力関係)である。結局のところ、電話問題の本質はここにあり、当該部分を抜きに電話の是非を議論しても永遠に解決策は出てこない。では、電話不要論と権力にはどのような関係があるのだろうか。

説明するまでもなく電話は同期通信であり、お互いが同時刻にツールを使わなければコミュニケーションを取れない。一方、電子メールは相手と同時刻に利用する必要がないので、非同期通信である。LINEに代表されるコミュニケーションツールは、同期、非同期、両方の性質を持っており、チャットのように使えば同期ツールになるし、電子メール的に利用するなら非同期ツールになる。

電話が同期通信である以上、あらかじめ電話する時間を決めておかない限り、どちらが一方的に電話をかけなければ通話を始めることはできない。「一方的に電話をかける」ことが問題の根幹である。

立場が弱い人(例えば部下や顧客に営業している営業マン)は、基本的に一方的に連絡することはできない。上司でも秘書のような役割の社員がいる場合、電話を取り次いでもらえる保証はないし、営業マンが顧客に電話をしても居留守を使われるかもしれない。個人の携帯にかけたとしても、相手の立場が強ければ、留守電を聞いてからしか返事はもらえない。

電話と「権力」の密接な関係

結局のところ、相手の状況などお構いなしに一方的に電話をかけられるのは、上司や顧客など、立場が上の人(つまり権力を持っている人)に限定される。ひろゆき氏も「立場が強くて無能な人ほど電話を使いたがる」と述べている。

ひろゆき氏が言うように、立場が強く、かつ無能な人ほど、一方的に電話をかけてきて、メモもしっかり残さないので、後でもめることが多い。つまり電話をストレスなく使えるのは、互いを尊重し合える関係が構築できている相手に限定される。

この話は、電話が不要かどうかということではなく、立場や関係性による受け止め方の違いであり、電話はそのきっかけに過ぎない。この議論と電話の是非を混同してしまうと、論点がズレてしまう。

緊急時など電話が絶対的に必要な場面であっても、「面倒だ」といった理由で電話をかけない人もいる。こうした人たちは、後になって「緊急なのに、なぜ電話してこない!」と言っても「メールしましたけど」などと無神経な発言をすることが多い。先ほどの無能な権力者と同様、基本的に相手のことをまったく考えない人であり、ここで生じている行き違いもツールが問題ではないだろう。

ひろゆき氏のように仕事を選べる人は、こうした相手に対しては、仕事をしない、電話に出ない、留守電を聞いてからしかかけ直さないといった形で、相手を選別していると思われる。彼の発言を受けて、識者の一部も「一方的な電話は迷惑だ」と述べているが、これも仕事を選べる立場だからこその発言といってよい。

最終的には格差問題につながる?

職種によっては、取引相手に電話で長々と説明せざるを得ず、(ムダだと分かっていても)それに付き合わなければならない人もいる。結局のところ、無意味なコミュニケーションを避けられるのは、自身のコミュニケーションスキルと相手のスキル、そして双方の力関係で決まってしまう。

自身にスキルや能力がない場合、使い慣れたツールしか使えず、相手に迷惑をかけることになる。一方で、自身が高いスキルや能力を持っていても、相手が単一のコミュニケーションを望み、それを回避できなければ、それに付き合うしかない。

電話しか連絡手段がなかった時代は、他に選択肢がないので、どんな環境の人も同じツールを使っていた。だが今の時代は次々と新しいコミュニケーションツールが登場しており、スキルが高い人は新しいツールを積極的に使いこなすだけでなく、必要に応じてツールをうまく使い分けている。連絡を取る相手についても、機転が利くスキルの高い人だけを選別しようと試みるはずだ。

結果としてツールをうまく使いこなせる人は、似たような人とビジネスを進めることになるので、生産性が向上し、経済的にも成功しやすくなる。一方でツールを使いこなせない人、使いこなせない人を相手にせざるを得ない人は、低い生産性のほうに引き寄せられてしまい、経済的な利益も小さくなる。

結局のところ電話の問題は、自身がどれだけ自由に行動できるのか(つまりどれだけ優位な立場にいるのか)に依存しており、最終的には格差問題を引き起こす原動力となってしまうのだ。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に「貧乏国ニッポン」(幻冬舎新書)、「億万長者への道は経済学に書いてある」(クロスメディア・パブリッシング)、「感じる経済学」(SBクリエイティブ)、「ポスト新産業革命」(CCCメディアハウス)などがある。

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