【定年後の居場所】自己実現へ「走る」新人タクシー運転手 20代女性と50代男性 - イザ!

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定年後の居場所

自己実現へ「走る」新人タクシー運転手 20代女性と50代男性

この春にタクシーに乗車した時に2回続けて新人ドライバーに出会った。はじめは家族と一緒に京都に出かけた時のことだ。京都駅の近くから鉄道博物館まで乗車した。20代と思しき女性ドライバーに行く先を告げると博物館の場所を知らなかった。近距離だったので意外だった。研修を終えて走り始めてから2カ月ほどだという。

「京都の道を覚えるにはどれほどかかるのですか?」と聞くと、決まった期限があるわけではなく、走るたびに徐々に覚えていくそうだ。特に地図を見ているだけでは頭に入ってこなくて、実際にお客さんを乗せて走るとインプットできるのだという。京都の主要な道路は大体わかってきたが、お客さんは裏道や細い道もよく知っているのでまだまだ大変だと話していた。

なぜ若くしてタクシー運転手になったのかと聞くと、「将来は観光の仕事をしたいので、まずはタクシーで京都のことを学びたい」と答えてくれた。自分の将来を見据えてタクシーの仕事をしているという発言が意外だった。私はタクシードライバーと話すことは多いが、次のステップで役立つからという理由で乗車しているという話を初めて聞いた。

2人目は、神戸市内で風雨が激しい時に電話でタクシーを呼んだ。この天候だと依頼も多いだろうから長く待つことを覚悟したが男性ドライバーが10分も経たないうちに来てくれた。

近くの駅前までと告げると、「このまままっすぐの道で良いのですね?」と確認されて驚いた。一番近くの駅への道筋すらはっきりとは分からなかったからだ。「どれくらいの期間乗っているのですか?」と彼に聞くと2週間くらいだという。「それまでは会社員だったのですか?」と尋ねると、建設会社のサラリーマンだったという。後ろ姿とバックミラーに見える表情から判断すると、現場ではなく設計か事務職の仕事をしていたように見えた。年齢を聞くと50歳だという。

「なぜ転職したのですか?」と聞くと、仕事や会社は嫌じゃなかったのですが、このまま会社員を続けるのはどうだろうかと10年ほどずっと迷っていた。何か自分が主体的にやれる仕事を探していたのだそうだ。今は、給与は下がったがいろいろ学べることが多いので頑張っていきたいと語っていた。「私も47歳で会社を一旦休職して、それがきっかけで二足の草鞋をはくようになりました」と話すと興味を持ってくれた。お互いに40代というのは不安定な時期かもしれませんねと笑っているうちに目的地に着いた。

2人の新人ドライバーとの出会いは私にとって何かとても気分の良いものだった。若い時の自己実現は、女性ドライバーのように見聞を広めて新たな経験を積みながら自らのキャリアの道筋を作っていくことだろう。一方で中高年以降の自己実現は、男性ドライバーのように今までとは違う新たな自分を発見することだと私は考えている。そういう意味では、2人ともそれぞれの自己実現に向かって進んでいる姿が私に刺激を与えたのだった。

■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。20年1月に『定年後のお金』(中公新書)を出版。

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