【今よみがえる相米慎二の世界】夏目雅子に「あまり頭よくないよね」と大女優の片鱗が垣間見えた 「魚影の群れ」(1983年) - イザ!

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今よみがえる相米慎二の世界

夏目雅子に「あまり頭よくないよね」と大女優の片鱗が垣間見えた 「魚影の群れ」(1983年)

熱い演技をみせた夏目雅子だったが…
熱い演技をみせた夏目雅子だったが…

 相米慎二といえば無類のギャンブル好き。競馬や競輪に目がなく囲碁も好きだった。仕事をすっぽかすこともたびたび。さすがにこの青森ロケでは青森競輪が開催していなかったので、抜け出すことはなかったようだ。

 原作は新潮社から刊行された吉村昭の短編小説集。最初は『海の鼠』というタイトルだったが、文庫化の際に『魚影の群れ』に変更された。

 主人公の小浜房次郎は緒形拳、娘のトキ子に夏目雅子、トキ子の夫の俊一に佐藤浩市。房次郎の元妻、アヤは十朱幸代、漁師仲間に寺田農、エイスケに五代目三遊亭円楽が出演している。

 1981年に深作欣二監督が松坂慶子主演で五木寛之原作の『朱鷺の墓』をやりたいと松竹に企画をあげた。ロケのセッティングなど製作が進んでいたが、さまざまな問題が噴出。仕方なく深作は中止を申し入れた。

 困ったのは松竹。このままではかなりの損害が出ると踏んだ織田明プロデューサーは代案を要求。それが『蒲田行進曲』。そこで、この『魚影の群れ』のお鉢が相米監督に回ってきた。

 撮影では釣れなかったときのために電動の魚を用意していたそうだが、実際に撮影が始まると緒形がマグロをガチで釣り上げた。このシーンは圧巻で、本物の漁師みたいだとスタッフからも拍手が上がったという。

 相米マジックと呼べるほど長回しの連続で、漁のリアルさは抜群。小型の船で漁をする孤独と恐怖がよく分かった。日本版『老人と海』だと評判になった。特に撮影アングルの絶妙さは、どうして撮ったのか分からないと監督仲間からも絶賛の声が。

 キネマ旬報社刊『女優・夏目雅子』(2015年)で彼女はこんなことを語った。「監督がさあ、私にイメージじゃない、って言うの。夏目さんは洗練され過ぎていて、漁師の娘には見えないって。イメージじゃなきゃ最初からキャスティングしなきゃいいじゃない。なのに毎日畳の上に正座させてお説教するんだけど急に変わるわけないよね。(中略)毎日付き合ってあげたけど、あまり頭よくないよね」とは大女優の片鱗(へんりん)が垣間見える。

 房次郎がアヤと20年ぶりに再会するシーンは北海道増毛町で撮影された。ロケに使われた旧富田屋旅館は老朽化が進んだため70年代終わりに営業をやめた。しかし増毛町では保存運動を展開している。 (望月苑巳)

 ■相米慎二(そうまい・しんじ) 1948年1月13日生まれ。72年、中央大学を中退し、契約助監督として日活撮影所に入所。長谷川和彦や曽根中生、寺山修司の元で主にロマンポルノの助監督を務めた。76年にフリー。80年、薬師丸ひろ子主演の『翔んだカップル』で映画監督デビューした。2001年9月9日、肺がんのため、53歳で死去。

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