【マンガ探偵局がゆく】昭和30年代の田舎を伝えたい 自らの少年時代をもとに描いた勝川克志の「庄太」 - イザ!

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昭和30年代の田舎を伝えたい 自らの少年時代をもとに描いた勝川克志の「庄太」

絵柄もノスタルジックな『庄太』
絵柄もノスタルジックな『庄太』

 マンガのよさは、言葉だけでは伝わらないものが絵で伝わるということ。今回はそんな依頼である。

 「小学生の孫にわたしの子ども時代のことを話すのですが、今時の子にはなかなか理解してもらえません。なにかいいマンガはないでしょうか? 以前、映画で『三丁目の夕日』をみたのですが、あれは都会の昭和30年代で、わたしが暮らしていた群馬の田舎とはかなり違っていました。自然に囲まれて、小さな工場もあって、駅前は商店や映画館もある。それが、私が生まれ育った土地でした。ないものねだりかもしれませんが、似たような環境で育ったマンガ家さんはいませんかね」(団塊じぃじ)


 かつて、都会と地方の違いは現在よりもずっと大きかった。都会も地方もあまり変わらなくなったのは、テレビの普及やその後の1970年代に進められた日本列島改造が影響しているのだろう。

 さて、依頼の件だが、勝川克志の『庄太』はいかがだろうか。1950年に岐阜県恵那郡山岡村(現在の恵那市)で生まれた作者が、自らの少年時代の思い出をもとに描いたノスタルジーあふれるマンガだ。

 主人公の庄太は小学生。家族は農業をしながら陶器工場で働く父親と専業主婦の母親、しっかりものの妹、畑仕事やわらじ作りが得意なおばあちゃんの5人。亡くなった先代は養蚕農家で、屋根裏にカイコを飼っていたが、いまは子ども部屋になっている。

 友達は、メカに強く虫やキノコなども詳しい金一、イジけたナスビ、学校の先生の子ども・町子など。都会からはシームや丈二など転校生もやってくる。

 大きな事件は起きないが、夏には沼や川で泳ぎ、冬には山でスキーやそり遊び、秋には学校総出でイナゴ取り大会と退屈する暇がない。そのほかの娯楽には、映画館もあるし、紙芝居屋さんもいる。

 のんびり、ゆったりした時間の流れの中に、自然災害や友との別れなども経験しながら、庄太は成長していく。

 一編一編のお話もさることながら、今の子どもにはなじみのない味噌作りやユイ(農家の助け合い制度)、近眼治療機などについては絵入りの簡潔な説明「克坊豆知識」が加えられていて、これがなかなか懐かしい。お孫さんを喜ばせる以上に、依頼人を喜ばせること請け合いだ。

 単行本は上下2巻がさんこう社から出ている。電子版でも入手可能だ。

■中野晴行(なかの・はるゆき)1954年生まれ。フリーライター。和歌山大卒業後、銀行勤務を経て編集プロダクションを設立。1993年に『手塚治虫と路地裏のマンガたち』(筑摩書房)で単行本デビュー。『謎のマンガ家・酒井七馬伝』(同)で日本漫画家協会特別賞を受賞。著書多数。

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