【今よみがえる相米慎二の世界】他の役者予定も“常連”寺田農「おれがやる」 「ラブホテル」(1985年) - イザ!

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今よみがえる相米慎二の世界

他の役者予定も“常連”寺田農「おれがやる」 「ラブホテル」(1985年)

相米作品の常連だった寺田農
相米作品の常連だった寺田農

 かつて映画界を席巻した「日活ロマンポルノ」。ピンク映画とは違いストーリーがあり、約90分の中で10分に1回は濡れ場を見せるという約束事があった成人映画レーベル。名監督といわれる人の多くがロマンポルノで腕を磨いた。

 相米慎二監督も『ラブホテル』を撮っている。後期ロマンポルノの傑作と位置づけられているが公開当時は賛否両論だった。神代辰巳、曽根中生、寺山修司らの助監督を経て初めて撮ったロマンポルノだった。

 原作は石井隆の劇画で『天使のはらわた』シリーズの1作。挿入歌がよかった。山口百恵やもんた&ブラザースの楽曲が世紀末を思わせ、やるせなく印象的だったのでご記憶の方も多いのでは。もんたよしのりの『赤いアンブレラ』はとりわけ人気があった。

 ちなみに本作で村木を演じた寺田農は『東京上空いらっしゃいませ』を除いて相米作品すべてに何らかの形で関わっている。『お引越し』ではメイキングのナレーションを担当。『魚影の群れ』と『光る女』は完成した上映版には1カットも出ていないが、クレジットは表記されている。出演シーンがカットされたのだろう。『台風クラブ』になると老人役の特殊メークなので見た目では分からない。

 この『ラブホテル』は台本を読んで「おれが村木をやる」と寺田が手を挙げた。実は監督は他の役者を考えていた。

 低予算で撮影は10日間というハードスケジュール。お昼からはじまった撮影が終わるのは翌朝7時。だから監督と役者がリハーサルの間はスタッフが寝ている。スタッフが準備する間は役者が寝ている。でも主役の名美を演じた速水典子が寝ると、監督は「起きろ!」と怒鳴ったそうだ。

 相米監督はふだんから「映画は画より音だ」と言っていた。名美は大股で歩くことにしようと監督が指示した。そこで男のスタッフがハイヒールを履いて効果音を作ったという。ある対談で寺田と速水がバラしていた。

 撮影現場に使ったラブホテルは今も渋谷ユーロスペースから徒歩2分のところに現存する。ある役者は「(撮影後)2、3年はあのあたりに行きたくなかった」とか。

 1986年の第7回ヨコハマ映画祭では1位(作品賞)を獲得。寺田農が主演男優賞、速水典子は最優秀新人賞を受賞するなど6冠。

 同僚のタクシー運転手に佐藤浩市やカメオ出演で萬田久子らが顔を見せている。(望月苑巳)

 ■相米慎二(そうまい・しんじ) 1948年1月13日生まれ。72年、中央大学を中退し、契約助監督として日活撮影所に入所。長谷川和彦や曽根中生、寺山修司の元で主にロマンポルノの助監督を務めた。76年にフリー。80年、薬師丸ひろ子主演の『翔んだカップル』で映画監督デビューした。2001年9月9日、肺がんのため、53歳で死去。

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