みずほ銀行で相次いだシステム障害について、第三者委員会は行内の運用面の未熟さが原因だと結論付けた。みずほは平成14年の発足後、2度にわたり大規模なシステム障害を起こし、その度に再発防止策を実施してきたが、またしてもその教訓が生かされなかったことが裏付けられた。報告書が指摘した「容易に改善されない体質と企業風土」を今度こそ変革できるかが最大の課題になりそうだ。
「積極的に声を上げることでかえって責任問題となるリスクをとるより、自らの持ち場でやれることはやっていたといえる行動をとる方が、合理的な選択になるという企業風土がある」
報告書はATM(現金自動預払機)停止など一連の障害に、危機意識の欠如といった過去の障害事例との共通項があると指摘した。
みずほの前身である第一勧業、富士、日本興業という旧3行の牽制(けんせい)関係と縦割り意識は、過去にも不祥事の温床と指摘されてきた。過去2回の大規模障害で旧行意識の払拭を掲げたものの、3度目の障害が後遺症を改めて浮き彫りにした。
端的に表れたのが顧客目線の欠如だ。システム障害ではATMにキャッシュカードや通帳が取り込まれ、何時間も待たされる顧客が続出した。報告書は対応が遅れた一因として「人事評価や人事育成の際に、顧客目線で積極的に行動することが評価されてこなかった可能性も否定できない」とし、社員教育や育成部分での問題点も言及している。
みずほ銀の持株会社みずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は15日の記者会見で、「企業風土は結果として醸成されるものだ。経営が言っても簡単に変わらない」と漏らした。発足後、約20年が経過しても変えられなかった企業風土を、いまから変革するのは容易ではない。
一つのカギを握るのは社内の風通しだろう。坂井氏は「巨大組織の長い階層の中で、経営と現場の思いが有機的に交わらない。伝えたつもりで伝わっていない」と述べ、システム障害の背後にあるコミュニケーション不全を指摘した。組織に抜本的なメスを入れ企業風土の変革を妨げる根本原因を払拭できるか。みずほには強い覚悟が求められる。(西村利也)