【小林至教授のスポーツ経営学講義】総合スポーツ大会を独占、時代にそぐわぬIOC 商品の分離あるいは組織の分割必要 - イザ!

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小林至教授のスポーツ経営学講義

総合スポーツ大会を独占、時代にそぐわぬIOC 商品の分離あるいは組織の分割必要

石川県では若村麻由美が聖火リレーを務めた(代表撮影)
石川県では若村麻由美が聖火リレーを務めた(代表撮影)

スポーツをプリズムに経済学の基礎を教えているわたしにとって、IOCは、独占とは何か、その何が問題なのかを説明するに格好の教材である。

現代資本主義社会では、経済の繁栄と成長の基盤は公正かつ自由な競争の促進にあるという考えのもと、その状態を保つために法制度が整えられている。日本の独占禁止法、米国の反トラスト法、EUのEU競争法がそれだ。WTOなど国際間の枠組みもある。

一方、事業体にとって独占・寡占は蜜の味で、合併、協定、談合などなどあの手この手で競争を排除することを試みる。そもそも公正で自由な競争は弱肉強食ということでもあり、結果として独占・寡占を生み出すという矛盾もあるが、そんな歴史の積み重ねのもと、少なくとも先進国では消費者の利益はある程度、守られるようになっている。1990年代後半、マイクロソフトがウィンドウズでOS市場を制覇したところで、日欧米の当局がそれぞれ同社を競争法で提訴したのはその一例である。

しかし、IOCはそんな現代社会の枠組み・ルールに従う必要がない特殊な団体である。例えば非政府組織(NGO)かつ非営利団体(NPO)という衣をまとったうえで、スイスに本拠を構えているのはそのことを象徴している。スイスでは警察や司法当局であっても、犯罪への関与が明確でない限り銀行の顧客情報を閲覧できない。賄賂も罪に問われない。IOCの目玉商品である五輪は、総合スポーツ大会として他の追随を許さない、市場を決定的にコントロールできるチカラを有している。

こうして築いた独占的地位は、それを成し遂げた経営力は称賛に値するが、現代社会では許されない形態である。開催を望む都市に、五輪以外では決して必要としない規模の競技場や、最終的に赤字が出た場合の損失の全負担を約束させる。そして選手に対価を払わない。たとえ大会参加に伴いコロナ感染しても自己責任だという。いずれもアウト。相手がいいと言っているからそれでいいのではないか、というのは独占事業体がいつも言うことだが、それが通れば独禁法はいらないのだ。相手に選択肢がない状態になっていることが問題なのである。

自浄作用に期待するのは、これはIOCに限らずだが、だったら法律はいらないということになる。事実、2002年ソルトレークシティー冬季五輪の招致委員会によるIOC委員の買収が発覚し、世界中の非難を浴びたときには「もうやめます」と言ったが、招致のためにIOC委員を買収する行為はリオでも東京でも発覚するなど、脈々と継続している。

では、こうした独占企業体に市場メカニズムによる浄化の網に掛けるにはどうすればいいか。まず、IOCをコングロマリットとして扱う必要があるだろう。そのためにどのような法解釈を適用するかは法律家と政治家の仕事だが、本気になればなんとかなるだろう。

次にすべきは分割あるいはサービスの分離だ。マイクロソフトが日欧米当局との係争を経て、自社のウェブブラウザ(エクスプローラー)だけでなく他社のウェブブラウザも選択できるようにしたように、商品を分離するか。あるいは国鉄を民営化した時のように分割するか。IOCの場合も夏と冬、屋外と屋内、地域など分離・分割の方法論はさまざまにあろう。

いずれにせよ、初代会長のクーベルタン男爵が、世界平和と青少年の育成という崇高な理念の実現のために、私財を投げ打ち破産してしまった黎明期と、ぼったくり男爵率いる貴族集団が都市を食い物にしていると揶揄されるようになったいまを対比すると、IOCという組織形態は潮時を迎えたということなのだろう。(桜美林大教授、小林至)

zakzak

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