【有本香の以読制毒】自民党よ目を覚ませ いまやるべきはLGBT法案か? 不可解なベテラン勢の姿勢…“公明忖度病”か - イザ!

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有本香の以読制毒

自民党よ目を覚ませ いまやるべきはLGBT法案か? 不可解なベテラン勢の姿勢…“公明忖度病”か

自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」などの合同会議=東京・永田町の自民党本部
自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」などの合同会議=東京・永田町の自民党本部

通常国会の会期も残すところ約10日(=会期末16日)。ここへ来て、自民党内を騒がせた法案がある。先週末の5月29日、「私はまだ(成立を)諦めていない」と、稲田朋美元防衛相が気炎を上げた、その法案とは―。コロナ対策で弱点が明らかとなった日本国憲法改正案か、それとも連日、沖縄県・尖閣諸島を脅かす中国海警局船への対応策か、と思いきやさにあらず。LGBT法案(LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案)だという。

先月来、自民党内で推進派と反対派のバトルが繰り広げられ、1日に自民党の森山裕、立憲民主党の安住淳両国対委員長が、今国会提出見送りを合意したとされる(=安住氏は否定)。

本件や、過日の夫婦別氏(いわゆる夫婦別姓)の一件で、改正の急先鋒(せんぽう)となった稲田氏は、保守系の人々から「変節した」と批判を浴びているが、筆者はこれを稲田氏一人のこととは見ていない。自民党の抱える根深い問題の一断面だ。

同法案は「差別禁止ではなく理解増進」だと稲田氏は自身のツイッターに書いている。理解増進のために法律まで必要か? との根源的疑問がまずあるが、それはひとまず横に置く。

実は筆者は5年前(2016年)、自民党が「LGBT特命委員会」を立ち上げた際、初代委員長に就いた古屋圭司元国家公安委員長を取材し、ネット番組「虎ノ門ニュース」にも招いた。

古屋氏はこう言っていた。

「LGBTを、第2の人権擁護法案にしてはいけない」

「日本は、キリスト教を価値観のバックボーンとする欧米諸国と違って、歴史的にも性的少数者に寛容な国だ。日本らしさを損なわず、しかし、少数者への理解が進むような策を検討する」

「カミングアウトなどしなくて済む社会が理想」

古屋氏のこれらの発言には、視聴者、とりわけLGBTの当事者である方々から多くの賛同の声が寄せられた。それがいま、逆方向に進もうとしている。

ちなみに、「人権擁護法案」とは、02年以降、何度も「出ては消え」を繰り返した悪名高き法案だ。「不利益、不快と感じたらすべて差別」であり、「差別か否かは被差別者しか分からない」という理屈のもと、「差別者」と認定された人の排除を可能とし、「言論の自由」を脅かしかねないと危惧された。古屋氏は5年前、かつて自らがこの悪法案阻止のため「命賭けて闘った」とも語っていた。

今回の修正LGBT法案は、もとの自民案では医学用語で使われる「性同一性」としていたものが、公明党や立憲民主党の要請で「性自認」に修正され、立憲民主への配慮で「差別は許されない」の一文が追加されたという。

「性自認」という、誰かの「お気持ち」一つで「差別」と決めつけられ、「許されない」との文言をもとに訴訟乱発へとつながる恐れがある。反対派のこの懸念は人権擁護法案のときと同種で、筆者も同感する。

党内には「稲田氏が功を焦って暴走した」という声があるが、果たしてそうだろうか。

あくまでも筆者の私見だが、稲田氏は非常に共感性の高い人だ。7年前の政調会長時代、筆者が行ったテレビインタビューでは、専業主婦への直接ヒアリングで認識が改まった、女性政策のヒントにしたいと目を輝かせ語っていたことを思い出す。

そんな稲田氏が今回、他党との調整役を務めたのだが、筆者にはむしろ、この修正案で良しとした自民党のベテラン勢の姿勢の方が不可解だ。

先出の古屋氏や、新藤義孝元総務相は、なぜ黙っているのか。また、この法案や、夫婦別氏案への稲田氏の傾注に常に寄り添うようにしてきた野田聖子幹事長代行の存在も気になる。

党内の若手、中堅議員からは「修正のキモは今回も公明党。だから重鎮方も何も言えない」との声も聞かれる。

稲田氏だけを責めても詮無(せんな)い。9年前の政権奪還時の志を忘れて「公明忖度(そんたく)病」に罹り、政策の優先順位も忘れた自民党では、次の選挙への明るい材料は得られないだろう。

ありもと・かおり ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。

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