【ドクター和のニッポン臨終図巻】俳優・田村正和さん どこまでもミステリアス…完璧に貫いた「引き際の美学」 - イザ!

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ドクター和のニッポン臨終図巻

俳優・田村正和さん どこまでもミステリアス…完璧に貫いた「引き際の美学」

田村正和さん
田村正和さん

昨日よりも今日、今日よりも明日、あなたを愛します--こんなメッセージがラテン語で書かれたペンダントを奥様に送られていたそうです。長い役者人生で浮いた噂ひとつ出ることはなく、プライベートはほとんど明かさない人でしたが、このエピソードだけでとても素敵なご夫婦だったことがわかります。

俳優の田村正和さんが、4月3日に都内の病院で亡くなりました。享年77。2006年に逝去された兄の田村高廣さんと同じく、喜寿での旅立ちでした。

死因は、「心不全」との発表です。2月に体調が悪化し入院されたとのこと。田村さんは若い頃から心臓に持病があり、お母様も心臓が弱かったといいますから、遺伝的な要素もあったのでしょう。10年以上前には、「冠動脈性心疾患」と診断されたようです。

心臓は1日約10万回の収縮と拡張を繰り返し全身に血液を送るポンプの役割をしています。その心臓の筋肉を動かすのにも、もちろん血液は必要です。この役割を担うために心臓を取り囲むように流れる血管が、冠動脈です。冠動脈に悪玉コレステロールが溜まり、十分な血液が心臓に送られない状態が「狭心症」。血液が完全に途絶えてしまい、心臓の筋肉が壊死(えし)状態となるのが「心筋梗塞」で、この2つの状態を合わせて「冠動脈性心疾患」と呼びます。

治療には、薬による治療、カテーテル治療、冠動脈バイパス手術の3つの方法があります。どの治療法を選ぶかは、その人の体力や年齢、そして社会的な状況も鑑みながら決めることとなります。

田村さんは2018年、俳優引退を決めてから手術をされました。その後、公に姿を見せることはありませんでした。「もうすべてをやり切った。静かに死にたい」と。

天下の二枚目俳優の追悼とともに聞こえてくるのは、「食事しているところを誰も見たことがない」「散髪は美容師を自宅に呼んでいた」「台詞は完璧で、NGを出したことがない」「30年以上前に生前墓を購入」といった、あまりにもストイックなエピソードの数々。お葬式も派手にせず、静かに見送ってほしいと家族に伝えていたそうです。

僕は医師として、たくさんの死を見てきましたが、ここまで完璧に「引き際の美学」を貫いた人を知りません。老いた姿を見せず、落椿(おちつばき)のごとく消える。古畑任三郎が見抜いたどんなトリックよりも、その人生は鮮やかで、ミステリアスで、完璧でした。その演出に協力をした奥様にも、拍手を送りたいです。

zakzak

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