展望 米中覇権争い

日本はサイバー戦の“餌食”に サイバーセキュリティー統括する官庁なく…平時では法的制約で攻撃元へ侵入できず

 全領域戦におけるサイバー戦は、平時および有事において頻繁に利用される使い勝手の良い戦いだ。最近、サイバー戦に関して気になるニュースが2つある。

 1つは、今年の4月20日に報道された、中国人民解放軍(PLA)関連のサイバー攻撃だ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2016年にサイバー攻撃を受け、警視庁が捜査したところ、JAXAのみならず三菱電機、日立製作所、一橋大学など約200の研究組織も大規模なサイバー攻撃を受けていた。

 警視庁の摘発で画期的だったのは、実行犯を人民解放軍のサイバー攻撃専門部隊「61419部隊(青島所在)」に所属する軍人の指示を受けたハッカー集団「Tick」と特定したことだ。ちなみに、61419部隊は宇宙戦でも触れた戦略支援部隊の指揮下の部隊だ。

 中国では、人民解放軍や国家安全部などの指揮下で、民間業者などがサイバー攻撃を行っているとみられ、「Tick」はそのハッカー集団の1つだ。2000年代前半から活動を始め、航空や宇宙に関する研究組織などをターゲットにしている。宇宙関連の軍民両用の技術は、宇宙強国を目指す中国にとって垂涎(すいぜん)の技術であり、今後も中国からのサイバー攻撃は続くと覚悟すべきだ。

 2つ目は、米国の石油パイプライン業者「コロニアル・パイプライン」が今年5月7日、サイバー攻撃を受け操業停止に追い込まれた事件だ。この事件は、ハッカーの攻撃によって米国の重要なインフラが大混乱に陥った事例としては史上最大級である。米連邦捜査局(FBI)はロシア系のハッカー集団「ダークサイド」が攻撃を行ったと発表した。

 ジョー・バイデン米大統領は「この件にロシア政府は関わっていないと思うが、攻撃者がロシア在住という証拠があり、ウラジーミル・プーチン大統領に対処を求める」と話している。

 面白いことに、攻撃した「ダークサイド」の決済サーバーが何者かのサイバー攻撃によりダウンし、サーバーから暗号通貨が引き出されたという。米国による反撃の可能性がある。

 サイバー空間では、悪意を持つ国・組織・個人によるサイバー戦が激しくなっている。

 一方、わが国には安全保障を含むサイバーセキュリティー全体を統括する官庁がない。また、平時においては、憲法が保障する「通信の秘密」や電気事業法の制約により、サイバー攻撃元のサーバーなどへの侵入ができない。日本と米中露の違いは決定的だ。サイバー戦を戦う意思のない日本は邪悪な者たちの餌食になってしまうだろう。

 ■渡部悦和(わたなべ よしかず) 元陸上自衛隊東部方面総監、元富士通システム統合研究所安全保障研究所長、元ハーバード大学アジアセンター・シニアフェロー。1955年、愛媛県生まれ。78年東京大学卒業後、陸上自衛隊に入隊。その後、外務省安全保障課出向、ドイツ連邦軍指揮幕僚大学留学、第28普通科連隊長(函館)、防衛研究所副所長、陸上幕僚監部装備部長、第2師団長、陸上幕僚副長を経て2011年に東部方面総監。13年退職。著書に『自衛隊は中国人民解放軍に敗北する!?』(扶桑社新書)、『中国人民解放軍の全貌』(扶桑社新書)など。

zakzak

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