現職市長の急死により行われた5月23日の栃木県日光市長選の結果が、自民県連内に大きな波紋を呼んでいる。元市議の粉川昭一氏(57)と元副市長の阿部哲夫氏(71)=自民推薦=という自民系の新人候補2人の戦いは、わずか87票差で自民推薦候補が敗れた。同市などを含む衆院栃木2区は県内で唯一自民の議席がない「空白区」で、分裂選挙に加え、推薦候補の敗北は、秋までには行われる衆院選前に足場を固めたかった自民としては大きな痛手だ。関係者は体制立て直しを迫られている。(根本和哉)
2人の市選出県議
昨年から闘病生活を続けていた大嶋一生前市長が56歳の若さで死去したのが4月上旬。すぐに後継をめぐる動きが本格化した。
関係者によると、素早く動いたのが粉川氏側だ。大嶋氏のいとこで同市選出の自民県議、阿部博美氏が、粉川氏支援を真っ先に決めた。しかも粉川氏は大嶋氏と長年の盟友関係。阿部博美氏は、もう一人の同市選出自民県議、加藤雄次氏へ、粉川氏の推薦を願い出た。
しかし加藤氏には、他にも立候補を目指す複数の市議らが推薦を願い出ていた。悩んだ加藤氏は、かつて県議を7期務め、議長も歴任した自民の重鎮、渡辺渡氏に相談。渡辺氏が名前を出したのが、同市職員を40年以上務め、前回市長選に出馬してわずか15票差で大嶋氏に敗れた、阿部哲夫氏だった。
「今回は(現職の死去による)異例の選挙。前回15票差であれば、哲夫氏ではないか」。その一声もあり、自民は阿部哲夫氏の推薦を決定、他の市議らは引き下がった。