「4~6月は残業をしないほうがいい」本当の理由 “非常事態”時にはデメリットにもなる

給与が高いと社会保険料は高くなる

限られた給料の中から税金や社会保険料が引かれていて負担が重いと感じている人もおられるのではないでしょうか。なかでも健康保険と厚生年金保険(以下、厚生年金)の保険料はかなりボリュームがありますが、この金額は4月、5月、6月の給与をもとに毎年見直されます。

具体的には、この3カ月の間の給与の平均額を計算し、それを表1の標準報酬月額等級に当てはめて保険料を求めます。健康保険は1等級から50等級、厚生年金保険は1等級から32等級まであります。

表1 標準報酬月額と給与から天引きされる保険料額(筆者作成)
表1 標準報酬月額と給与から天引きされる保険料額(筆者作成)

例えば平均給与が29万円~31万円の間に収まる人は健康保険では22等級、厚生年金では19等級で、標準報酬月額は30万円となります。この30万円に保険料率を掛けて保険料が計算されますから、何等級に当てはまるか、逆に言うと4月~6月の平均給与がいくらになるかによって1年間の保険料が高くなったり、低くなったりするということです。

本来の保険料率は以下のようになっており、表1は社員負担分を抜粋したものです。


・健康保険 10%(協会けんぽ 令和3年4月~全国平均)

都道府県により異なります。健保組合の場合は組合ごとに異なります。


・介護保険 1.8%(全国一律 令和3年4月~)

健康保険料と合わせて40歳から給与天引きされます。


・厚生年金保険 18.3%(全国一律)

健康保険(40歳以降は介護保険料も)と厚生年金を合わせると30%近い保険料になりますが、そのうち半分は会社が負担するため、給与から天引きされるのは残りの半分となります。

保険料を抑えるためには4月~6月の給与を下げれば良い

では次に保険料を見てみましょう。

先ほどと同じ標準報酬月額が30万円の等級では健康保険料が1万5000円、厚生年金保険料が2万7450円となっています。

一方で例えば等級が一つ下がると健康保険料は1000円安い1万4000円、厚生年金保険料は1830円安い2万5620円となり、等級が一つ上がると健康保険料は1000円高い1万6000円、厚生年金保険料は1830円高い2万9280円となります。

ちなみに22(19)等級の前後は1等級の差が2万円のため、上がるにしても下がるにしても増減幅が同じですが、もっと下の等級では等級間の差が狭かったり、上の等級では広かったりするため、保険料の増減幅も異なります。詳しく知りたい場合は加入している協会けんぽの各都道府県のページや健康保険組合のホームページなどを調べてみると良いでしょう。

話を22(19)等級に戻して、こんな具合に1等級違うと月に健康保険と厚生年金の合計で約3000円保険料が違うため、よく「この期間は残業をしないほう方がいいよ」と言われたりするわけです。残業をすると給与が増え、等級が上がる可能性があるからです。

ただし念のため付け加えると、残業代などは締め日の関係で3月分が4月に払われるといったズレずれがあると思いますが、等級を決める基準はいつ働いた分かではなく、「いつ支払日か」という基準ですから気をつけてください。翌月払いの場合には3月の残業が4月の給与に反映され、等級決定に影響してくることになります。

残業すると給与が増え、標準報酬月額の等級が上がる可能性がある。「4~6月は残業しないほうがいい」と言われるのはそのためだ(画像はイメージです/Getty Images)

等級を下げる(保険料を下げる)とデメリットも

給与を抑えて等級を下げれば保険料を抑えられるのはメリットといえますが、等級を下げることによるデメリットもあるため、注意が必要です。

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