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「おちょやん」で描かれた劇団で生きる コロナから復帰 松竹新喜劇代表・渋谷天外さん

産経ニュース
「7月の南座の松竹新喜劇公演では、新作喜劇『一休さん』も出します。いろんな新喜劇を楽しんでいただきたい」と話す渋谷天外さん=京都市東山区(南雲都撮影)
「7月の南座の松竹新喜劇公演では、新作喜劇『一休さん』も出します。いろんな新喜劇を楽しんでいただきたい」と話す渋谷天外さん=京都市東山区(南雲都撮影)

コロナ禍の厳しい時代。閉塞(へいそく)した世の中だからこそ、人は救いや喜び、笑いを見いだそうとしている。「こんなときやからこそ、うちの芝居が求められる」というのは、松竹新喜劇代表の渋谷天外さん。70年以上にわたって、笑いと涙の上方人情喜劇を標榜(ひょうぼう)してきた同劇団にいま、改めて注目が集まっている。NHK連続テレビ小説「おちょやん」でもヒロインが在籍していた劇団として取り上げられ、お茶の間の話題を呼んだ。「うちの芝居は大人の芝居」という天外さんが語る上方人情喜劇の神髄とは―。

つらい時こそ笑いと涙

実は、天外さんの取材は1月初旬に行っていた。元日から京都の南座で開催されていた松竹新喜劇公演の合間を縫ってのインタビュー。コロナ禍ではあったが、新春公演の観客の入りは上々で、天外さんも「こんなつらい時やからこそ、みなさん、気軽に見れて楽しいもの求めてはるんやないかな」といつも通り、元気に話していた。

ところがそれから約2週間後、天外さんがコロナに感染したというニュースが飛び込んできた。公演は千秋楽を迎えた後だったが、「和歌山県の病院で集中治療室(ICU)に入っている」「3、4月の舞台を降板した」との情報も入り、大丈夫だろうかと心配していた。インタビュー記事の掲載もいったん取りやめになった。

幸い、約1カ月後の2月19日に退院。自宅で療養生活を送りながら体力の回復を待ち、7月に南座で行われる松竹新喜劇公演で舞台復帰することが決まった。

「いやあ、みなさんにはご心配をおかけしました」。つい先日のこと、オンラインで明るい声が返ってきた。

「実は自分ではそれほど重症とは思ってなかったんですよ。ICUに入っているときも意識はずっとあったしね。ところがお医者さんは1月22日がやま、とおっしゃって。もうちょっと悪くなったら気管挿管になるところやったそうです」

犬猿の仲の兄弟を描く松竹新喜劇の名作「愚兄愚弟」で兄の惣太郎を演じる天外さん(左)=平成26年11月、大阪市中央区の松竹座©松竹

病気がわかったきっかけは夜中に倒れたこと。ベッドにたどりついて体温を測ると40度。「それでもまだ体温計が壊れていると思い込んでいた」。17日にPCR検査を受け、翌日、陽性と判定、すぐに入院となった。「当時、いろんなストレスを抱えていた。免疫力が落ちていたこともあるでしょうね」と振り返る。

「この病気の怖いのは、いまだに息切れが残っていることです」

7月の復帰に向けてリハビリのため、人気(ひとけ)の少ない場所をぐるぐる歩いているという。

「もう、むちゃはでけへん。でもある意味、それでいいのかなあとも思っているんです。僕も今年67歳。70歳近い〝おじい〟が引っ張ってる劇団てどうなんやろと思ってね。やっぱり若いエネルギーがバンバン出ているような劇団でないとあかんのと違いますか」

とはいうものの、俳優の演技には人生経験が出る。さまざまな体験が人物造形に深みと厚みを与える。ならば、天外さんの出番はまだまだ必要だ。

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