その一方で、アプリ収益のシェアを大きく伸ばしたのが中国だ。特にゲームが牽引(けんいん)しているとされる。“中国産ゲーム”の品質が向上したことに加え、ストーリーや声優を日本ユーザーの好みに合わせるというローカリゼーション(現地化)に成功。今や日本は「中国にとって最も成功した海外市場」(App Annie)なのだ。
実際、昨年の日本のモバイルゲーム売上高「トップ50」のうち中国のアプリが3割を占めている。2021年第1四半期の国内売上ランキングでも、定番の「荒野行動」(NetEase)と、昨年9月にリリースされた「原神」(miHoYo)という中国の新旧人気作がそれぞれ6位と7位に入っており、その勢いは疑いようもない。米国や韓国の企業も存在感を増しつつある市場環境で、国内のみに目を向けた「内向き志向」はそれ自体がリスクになるとみられている。
こうした中、海外に照準を定めたのがウマ娘だ。Cygamesの広報チームマネジャーは「韓国語版と簡体字版のリリースについては決定しています」と明言。すでに、韓国の聯合ニュース(電子版)で報じられ、ハングルのファンサイトも立ち上がった。韓国のネットユーザーの間には「パワプロ(コナミの野球ゲーム)のような育成ゲームに慣れていないと難しい」といった声もあるようだが、日本発のゲームに注目が集まっている。
日本企業も柔軟に開拓
新たな海外需要に焦点を当て、すでに新規開拓に着手した「外向き志向」の企業もある。スクウェア・エニックスは今年2月、インドの伝統的なボードゲーム、ルドを題材にしたアプリ「ルド ゼニス」で“13億人市場”への本格参入を果たした。「スマホの爆発的普及に加え、現地でオンライン決済が広がったことでビジネスをする下地ができた」(広報担当者)という。
同社によると、インドでは日本の代表的なゲームやアニメの知名度が高くないことから、「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」などの著名IP(知的財産)を起用せず、現地の文化に合わせたゲームを投入したという。日本市場に切り込んだ中国企業と同様、世界進出にはローカリゼーションを意識した戦略が必要のようだ。
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