バイデン政権、ワクチン特許で板挟み 途上国の放棄要求に米産業界反発

4月28日、米上下両院合同会議で演説するバイデン大統領=ワシントン(ワシントン・ポスト紙提供、AP)
4月28日、米上下両院合同会議で演説するバイデン大統領=ワシントン(ワシントン・ポスト紙提供、AP)

【ワシントン=塩原永久】新型コロナウイルスワクチンの特許権をめぐり、バイデン米政権が、放棄を求める発展途上国から圧力を受けている。途上国は米企業が握る特許を使い、自国生産を加速させて感染を押さえ込みたい考えだ。一方、開発に巨費を投じた米製薬業界は、収益確保の観点から特許放棄へ安易に応じないよう働きかけている。

感染症制圧のかぎとなるワクチンの開発に、米ファイザーや米モデルナ、米ジョンソン&ジョンソンがいち早く成功し、統計サイト「アワー・ワールド・イン・データ」によると、すでに米人口の44%が少なくとも1度の接種を受けた。

一部先進国では英国が51%となるなど接種が加速。対照的に新興国は遅く、感染拡大に見舞われるインドが9%、ブラジルが14%。南アフリカなどの途上国は1%未満にとどまる。

格差の背景には、自国民向けの確保を優先する「ワクチン・ナショナリズム」がある。欧州連合(EU)が輸出規制に乗り出し、米国も余剰分を輸出に回す姿勢をとっており、ワクチンの囲い込みが進んだ。

こうした中、インドや南アは昨年秋、世界貿易機関(WTO)にワクチンの特許を一時放棄するよう提案。WTOの「貿易関連知的財産権協定(TRIPS)」の規定適用の猶予を求め、大多数の国が支持したが、米国やEUが同意せず結論には至っていない。

米国では民主党左派が特許放棄に賛同しており、WTOと協議を継続している米通商代表部(USTR)のタイ代表が、米製薬企業と相次ぎ会談。米政治メディア「ポリティコ」によると、先月30日のWTOの会合で途上国側が提案を修正する方針を表明するなど、関係者が妥協点を探っている。世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は今月3日、「勇気づけられる進展」があったと述べた。

医薬品の特許をめぐる先進国と途上国の摩擦は、抗エイズウイルス薬などで繰り返されてきた。厳格な特許保護が、生産に乗り出したい途上国での普及で障害になれば、感染が拡大して人道的な問題を生じる。バイデン政権は、途上国へのワクチン外交を活発化させている中国に対抗するためにも、ワクチン普及で指導力を発揮したい意向とみられる。

ただ、特許だけで比較的簡単に作れるジェネリック医薬品(後発薬)と違い、ワクチンの工程は複雑だ。ウイルス変異の対応などでも、開発者と製造者の密接な協力が必要になる。

ワクチン開発に漕ぎつけた米製薬業界はさらに、利益を生み出す特許の放棄を迫られれば新薬開発に向けた資金が集まらなくなるとの立場も主張し、「米政府や米議会に強力なロビー活動を展開」(米メディア)しているという。特許放棄するより「生産を加速させて途上国に分配する方が役立つ」とも主張。自国の産業競争力を重視するバイデン政権は、板挟みとなっている。

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