笑える、ということは何も声を上げての爆笑や腹を抱えることばかりではない。無言やクスクス、ニヤニヤだってある。笑いの質は多彩だ。
東京・下北沢の本多劇場で上演中の舞台『みんながらくた』(14日千秋楽)は笑いの生地を幾重にも重ね、東京喜劇のおかしみを見せてくれる。
俳優の伊東四朗の生誕80+3周年記念と、何とか周年行事のように見立てた舞台で、伊東を中心にラサール石井(65)、戸田恵子(63)、小倉久寛(66)らが喜劇のとりでを作り上げる。
石井が劇作家の田村孝裕(44)にオーダーしたのは、落語ベースの物語。落語をそこそこ聞いたことがあると、物語の骨格が落語「井戸の茶碗」と分かる。さらに落語「猫の皿」のやり取りを意識したせりふに気づけば、自分はちょっとした落語聞きだと納得できる。
落語の井戸茶はいい人ばかりが登場する。武士も浪人も商売人も、周囲の人も。舞台では、訳ありの人々が物語を分厚くする。
「がらくたや」の店主で、連れ合いが亡くなった直後から5年間も閉店セールをしているのが伊東、バツイチの娘が戸田、ギャンブル好きのご近所が石井と絡み合うのは複雑な人々だ。