国会論戦の舞台が参院予算委員会に移った3日、立憲民主党などの野党は菅義偉(すが・よしひで)首相の長男、正剛(せいごう)氏が勤める放送事業会社「東北新社」による総務省幹部への接待問題や選択的夫婦別姓制度の導入に反対する文書に名前を連ねていた丸川珠代男女共同参画担当相への追及を強めた。しかし、首相や丸川氏は淡々とした答弁で乗り切り、野党の攻勢は空振りに終わった。
「なぜ選択的夫婦別姓に反対なのか。態度表明されているから聞いている。私は知りたい。答えてください」
選択的夫婦別姓制度に賛同する社民党の福島瑞穂党首は、こう訴えた。丸川氏は担当相就任前、自民党の国会議員有志が一部の地方議員に対し、夫婦別姓に賛同する意見書を地方議会で採択しないように求めた文書に名前を連ね、福島氏はこれを5回以上もただした。
丸川氏が「私は今、この場に閣僚として立っている。個人の考えを述べることは遠慮させていただく」と答弁しても福島氏は納得せず、ヤジで騒然となって審議がたびたび中断した。
その上で丸川氏は閣僚就任前の個人の意見として「(夫婦別姓は)家族の根幹にかかわる議論だという認識を持っていた」と冷静に答弁。福島氏は「夫婦別姓を認めたからといって天変地異が起きるわけでも、犯罪が増えるわけでもない」などと極論を持ち出したが、丸川氏は「(現行制度の)不便を解消する努力はこれまでにもしており、今後も必要だと思っている」と答えた。
衆院に続き総務省の接待問題もやり玉にあがった。立民の森裕子参院幹事長は総務省幹部が正剛氏らの接待に応じるなどした背景に、首相が総務相時代に人事権も駆使しながら、当時掲げていたNHK改革を断行したことへの官僚の恐れがあったと指摘。「(首相に対し)『こういう発言だったら気に入ってもらえるかな』『大丈夫かな』とか、そういうことしか言えなくなる。まさしく『忖度(そんたく)政治』だ」と挑発した。
これに対し、首相は「政治家は何をやるのかということを国民に約束している。役所の言う通りが仕事ではない」と切り返し、野党内では舌鋒(ぜっぽう)の鋭さで鳴らす森氏を相手に付け入るすきを与えなかった。(永原慎吾)