人の醜さに翻弄された生涯が共感を呼び、ツイートが伸びた…なんて書くと、獣の面をかぶった鬼殺隊の嘴平伊之助(はしびら・いのすけ)に失礼か。伊之助と鬼の因縁も明かされる。
人にも鬼にも慈愛に満ちた作品の世界観が凝縮された18巻で、膨らんだファン層が固まった感じ。一方で19巻以降、発売時期のツイート数は伸びを欠く。物語の終盤、戦闘シーンはいっそうの想像力が求められ、雰囲気もヘビーに。脱落者もいたのかな、と思う。
■第2波がやってきた
映画公開とともに、第2波が到来した。まだ集計していないが、11月の読書感想ツイートでも「鬼滅」の話題は目立ち、映画をきっかけに新たなファンを掘り起こしたのだろう。
12月4日にはコミックスの最終23巻が発売予定。ツイートの伸び方で、映画をきっかけに、原作ファンがどれだけ広がったかを見る機会になる。
とはいえブームは第2波で、新聞やテレビは遅ればせながら騒ぎだした感もある。原作を追った者として、ここまでの盛り上がりは予想外だった。反省を踏まえて申し添える。
アニメのオープニング、エンドロールを見たとき、出てくる名前に震えた。声優陣は文句なし。音楽は梶浦由記さんと椎名豪さんという反則級の黄金コンビが担っている。アニメが原作をどう昇華するかを想像しながら、最終巻まで駆け抜けるのも一興だと思う。
私情だが13~15巻が好きだ。「柱」と呼ばれる凄腕女性剣士の一人で、鬼の攻撃で気を失った甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり)に炭治郎らが覆いかぶさり、「この人さえ生きていてくれたら、絶対勝てる!!」と言って救う場面がある。
偽りのない生き方を鬼殺隊で見いだした蜜璃の心の奥底にある思いと、誰一人の命も失いたくない剣士らの思いがひとつになる。心が揺さぶられ、読むたび心中で蜜璃に覆いかぶさっているが、それを察した妻からの視線が冷たい。下心を抱くわけがないことを世に問いたく、映像化を望む。