ただ、こうした考え方が、今の米国で幅広い支持を得ているとは言い難い。
トランプ氏が記者会見で公式にマスク着用を推奨したのは死者が14万人を超えた後の7月21日と遅すぎたし、副大統領候補の討論会の開催時期は新型コロナに感染したトランプ氏自身の治療と経過観察が続いていた時期で、ペンス氏の主張が説得力を持つには環境が悪すぎた。
米統計分析サイト「ファイブサーティエイト(538)」によると、ペンス氏自身が対策チームの責任者を務めるトランプ政権の新型コロナ危機への対応の評価は、不支持が57・4%で、支持は39・8%(10月16日時点)。米国民が政権の対応に満足していないことは明らかだ。
大統領選で政権奪還を期す民主党候補のバイデン前副大統領は、早くからトランプ政権の対応を「失敗」と断じ、選挙戦を優位に進めてきた。米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、全米でのバイデン氏の平均支持率は51・2%と、トランプ氏の42・3%を大きくリード(同日時点)。バイデン氏は勝敗の行方を左右する激戦州でも先行し、トランプ氏の再選には「黄信号」が灯っている。
さらには社会経済活動の本格再開に向けてカギを握るワクチン開発で、トランプ氏が言及してきた「10月中の完成」が実現できないことも確定し、ますます逆転勝利のシナリオを描きづらくなった。
「介入」派の民主党
とはいえ、討論会でのペンス氏の主張は、仮に「バイデン大統領」が誕生した場合にその政権がどんな性格になるのかを予見するための助けになるかもしれない。
10月15日、中西部ペンシルベニア州で開かれた対話集会。有権者のワクチンに関する質問に答えたバイデン氏は、有効性が高いと証明されれば、国民全員が接種できるよう、全米の州知事や市長らに協力を求めて、事実上の「義務化」を目指すと述べた。