こうした状況について、農水省の担当者は「果樹を中心に日本品種が高く評価されており、守る対策をしていかなければいけないことがはっきりした」と語る。
対策の一つが種苗法の改正だ。国内向けに開発された登録品種の海外持ち出しが禁止となるほか、登録品種の種苗を「自家増殖」する際に、育成権者らに許諾料を支払う必要が生じる。
前出の静岡県の担当者は法改正について「権利が保護され、今回のような流出が防止できるのであれば有効な手立てなので、できれば早く成立してほしい」と漏らす。
ただ、一部の農業関係者や野党は「農業経営が圧迫される」と反発し、芸能人もSNSで反対を表明、法案は継続審議となった。
前出の農水省担当者は「増殖の際に許諾が必要なのは当たり前だ。これまでがゆるすぎたところもある」とする一方、「種苗法は新しく開発された品種以外には制限はなく、一般の方に大きな影響が出るとは思っていない」と強調する。
農業の知的財産権に詳しい東京理科大専門職大学院教授の生越由美氏は、種苗法改正について、「農水省の方向性はよいが、農家側の『自家増殖』に関する理解が十分に進んでいないのも、反対が起きている原因かもしれない」と分析する。
そのうえで、同法改正に加え、海外流出の阻止に特化した厳しい対策も必要だと指摘する。
「市場に出回っている品種の海外への持ち出しを防ぐには、自家増殖を制限するだけではやや無理がある。海外に出る時点で止める策も必要だろう」と生越氏。
具体策としては「出入り自由になっている農場から盗まれないようにしたり、税関チェックを厳しくする必要がある。品種登録についても育成権者に予算が下りない場合や手続きの担当者がいないという理由も耳にするので、国からコンサルタントを派遣することも必要だ。登録期限が過ぎた場合も、商標権を取れば同じ名前は使えなくなるので出願はすべきだ」と提言した。
対策は待ったなしだ。
カンキツの「せとか」(上)やイチゴの「紅ほっぺ」(下)など国内品種が持ち出されたのか