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秋の全国交通安全運動が30日までの日程でスタートし、東京都内でも新型コロナウイルスの感染拡大防止に配慮した形で啓発活動が展開されている。大規模なイベントが控えられ、児童や高齢者への十分な啓発が行えない実情がある一方で、コロナ禍で交通量が減ったことによって速度超過などの悪質な運転は増えているとされる。警視庁はインターネットを活用するなど試行錯誤を重ねている。(吉沢智美)
「横断歩道の渡り方から勉強しましょう」
23日、北区中里の聖学院小の体育館で警察官たちが声を張り上げていた。恒例の交通安全教室だが、目の前に児童たちの姿はない。代わりに置かれていたのは、警察官の姿を捉えるテレビ機材だけだった。
コロナ禍で密を避け児童を体育館に集められず、滝野川署はこの日、リモート形式での教室を初めて試みた。講堂の映像は教室の1年生の前のスクリーンに投影された。「反応が見えないし、内容を分かってくれるのか」。増田光春副署長は不安をのぞかせていたが、反応は上々のようだ。
教室が始まると、児童はスクリーンにくぎ付けになり、警察官の画面越しの問いかけに元気に返事をしていた。同小の田村一秋教頭は「やはり専門家に解説してもらえると、伝わり方も違う」と手応えを感じたという。
コロナ禍で交通を取り巻く情勢は変化している。
外出が控えられたことで交通量は目減りし、警視庁によると、都内での今年上半期の人身事故は1万1662件で、前年同期比3973件も減った。負傷者も1万3146人と同4727人も減少している。
ただ、死亡者は64人で同10人増加した。警視庁幹部は「交通量が減り、スピードを出しやすい環境になったため、無謀な運転をするドライバーが増えている」とみている。