アナログ国家の日本、ヒントにすべきエストニアの「デジタル理想郷」(2/2ページ) - イザ!

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アナログ国家の日本、ヒントにすべきエストニアの「デジタル理想郷」

支援が必要な人を政府が把握

児童手当など一部の給付については、申請が不要になっている。「手当をもらえますよ」といった通知を電子メールなどで受け取り、「社会福祉給付ポータル」にログインして、支払先の銀行口座や受取人などを確認、承諾すれば、手続きが完了する。

なぜ、このようなサービスを実現できるかと言えば、社会福祉給付データベースの存在が大きい。社会福祉給付関連のデータを一元管理することで、誰にどのような公的支援が必要なのかを政府は把握することができる。本当に守るべき弱者が誰なのかが分かれば、全ての住民に一律支給するような特別定額給付金は不要と言えるだろう。

エストニアでは、3月16日から研究活動を除き、全ての学校が遠隔教育に移行した。授業にはオンライン会議システムの「Microsoft Teams」や「Zoom」など民間サービスを活用。コンピューターがない家庭に対しては、市民ボランティアや企業がコンピューターを提供した。大きな混乱もなく短期間で遠隔教育に移行できたのは、これまで地道に進めてきたIT教育のおかげだ。

本格的な電子政府サービスが始まる前より、エストニアでは限られた予算の中から教育分野への投資が続けられてきた。1996年に始まった「タイガーリープ計画」により、全ての学校でインターネット利用が可能になり、ほとんどの学校にコンピューターラボが設置された。2012年開始の「プログラミングタイガー計画」で、子供たちは7歳からコンピュータープログラミングを学習するようになり、現在はITとアートを融合した科学、技術、工学、芸術、数学(STEAM)教育を推進している。エストニアでは、子供から高齢者まで、多くの家庭で1人1台のパソコン利用環境がある。

学校から家庭への連絡や成績管理も、コロナ禍の前からオンラインで行われていた。幼児教育から高等教育まで、ほぼ全ての教材はデジタル化され、インターネット経由で閲覧、利用できる。子供から大人まで、生涯の教育履歴はエストニア教育情報システムに保存されている。学校に通う授業だけがオンラインではないのだ。

1700以上の自治体がバラバラにデータを管理する日本で、エストニアのようなデジタル国家を実現することは極めて難しい。サービスを表面的にまねることはできても、その背後で動くデータの管理を見直す調整コストが、あまりにも大きすぎるからだ。単なるITの話ではなく、国と地方の行政改革や役割分担の見直しが必要になる。

IT利活用のゴールを「社会全体の幸福」としてきたエストニアでは、今回のコロナ危機により、多くの国民が「自分たちのやってきたことは間違いではなかった」と確信し、大きな自信を持つことができた。デジタル国家に対する国民の誇りは強化され、デジタル化の流れがさらに加速するはずだ。

もし日本でデジタル国家を実現できるとすれば、強い覚悟を持った政治的な意思決定が行われたときであろう。政治家や官僚だけでなく、社会全体で「国民のためのデジタル化とは何なのか」を真剣に考えることができれば、ゴールにたどり着くための道筋も見えてくると期待したい。

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