アルコール分を含まないノンアルコール飲料が人気を集めている。これまでノンアルの飲み物は、味や見た目がお酒もどきのものが多かったが、最近はおいしく、そして、本格的に進化している。お酒が苦手な人や健康上の理由でお酒が飲めない人にとっては、救世主となりそうだ。(橘川玲奈)
東京・六本木に7月、完全ノンアルバー「0%(ゼロパーセント)」がオープンした。「宇宙にできた最初のバー」をイメージしたという店内は、ポップな音楽が流れ、落ち着いた内装や照明でおしゃれな雰囲気だ。
人気の「アイスランドバブル」(1200円)は、客に出す直前にバーテンダーがカクテルグラスの上にしゃぼん玉のような、煙で満たされた半球のドームを乗せる。指で半球を割ると、燻(いぶ)されたような香りが漂う。カクテルには、ジャスミンティーやパイナップルの生絞りジュース、未熟ブドウのシロップなどが含まれ、甘く深い味わい。見た目も、味も香りも楽しい。
「アイスランドの間欠泉(熱湯や水蒸気が地上に噴き上がる温泉)の神秘的な情景をイメージした。香りと一緒にカクテルを楽しんでほしい」
こう話すのは、店をプロデュースした山本麻友美さん(31)。山本さん自身もお酒が苦手という。
「バーの雰囲気は好き。だけど、そこでウーロン茶やオレンジジュースを頼むのは気が引ける。お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる空間を作りたかった」と0%を立ち上げたきっかけを話した。
オープンから2カ月ほど。店には若い女性や、子供連れの母親グループなど集まる客は多岐にわたる。若い男性2人組がノンアルカクテルを飲みながら、将来について真剣に語りあう姿もあったという。
山本さんによると、ハーブを蒸留したノンアルの飲料など、英国や米国を中心に、おしゃれでおいしい飲料が発売されているという。「日本でももっとノンアルがはやると思う。お酒なしで楽しい話をしながらいい時間を過ごしてほしい」と期待した。
飲料大手サントリーによると、ノンアルコール飲料の市場は年々拡大し、10年間で4倍以上に成長したと推定される。
人気の背景には、健康志向の増大や、お酒に遜色ない味の良さがあるとみられる。
同社が成人3万人に行ったアンケートによると、ノンアル飲料を過去1年に飲んだ人のうち約7割が「期待よりおいしかった」「期待通りおいしかった」と回答。お酒をまねただけ、お酒と比べて風味が劣る…。そんな評価を受けてきたノンアル飲料は、着実に進化しているようだ。